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カクシゴト 6
「随分と良い顔をするようになったとは思っていたけれど、飛鳥も漸く落ち着ける相手を見つけたのね。でも、ややこしいったらありゃしないわ」
飛雅は俺の生徒、茉央は飛鳥と俺に抱かれた女で飛雅の母親、竜崎さんは兄貴のお気に入りで俺の上司。ややこしいと思われても仕方ない話だが、こればかりはどうしようもないけれど。
「ねぇ、雪夜……飛鳥と貴方は兄弟でしょ、それでもって容姿はそっくり。言い方は悪いけれど、貴方たち2人は穴兄弟なのよ。ということはつまり、父親不明の子は飛鳥の子ってことも考えられなくもないわ」
しっかり話を理解しているらしいランは、そう言って腕を組む。
だがしかし、だ。
「俺もその可能性は考えた、ただ……」
茉央から飛雅の話をされた後、俺は時が過ぎるのをぼんやりと待っていたわけではない。けれど、様々な可能性を思い浮かべる中で、飛雅の父親は俺なのではないかと思ってしまう理由が1つあって。
「飛雅って子のサッカーセンスを除けば、だけどね」
俺の思いを代弁したランは、苦い顔をして笑った。
「雪夜は立場上、茉央って女に近づくことが困難なのは理解できたわ。手っ取り早く問題解決するのなら、やっぱり飛鳥をとっ捕まえるのが1番だと思うけど」
……やはり、何かしらの真相を知る飛鳥とコンタクトを取るのが最善策なのか。ランも俺と考えが同じだとすれば、俺は今からどう動けばいいのだろう。
「俺が本当に飛雅の親だったら、俺はどうしたらいいんだ。というより、身動きが取れないこの状態を俺は星になんて説明すればいい?」
忘れてしまえたら楽なのかもしれないが、そうはいかない大切な存在。過去の自分が、今の星を傷つけることを予想していなかった俺は、後悔の念を募らせてしまう。
「星ちゃんには、現状を話しておいた方がいいと思うわよ。今後どうしていくのか別として、星ちゃんは雪夜の恋人なんだから……と言っても、尻込みしちゃうわよね」
「昔抱いた女が現れたってだけでも、星からしたら面白くない話だろ。しかも子供が俺の生徒で、んでもって俺がソイツの父親かもしんねぇーなんて……ダメだ、言えねぇーわ」
過去の女に嫉妬して、身体中の至る所を噛み尽くされる覚悟は出来ていても。怒ったり泣いたり、何かしらの感情表現をされたとしても。星の気持ちを受け止めてやることは出来るが、子供の話をするとなると俺にはハードルが高過ぎるわけで。
「アイツに飛雅のこと話したら、今までありがとうございましたっつって頭下げて家出できそうじゃん?星くんさ、ガチでキレると光より怖ぇーんだよ。俺には弁解の余地もねぇーしな……もう死にそう、俺」
「まだ貴方が父親だって決まったわけじゃないでしょう?それとも、雪夜は自分が父親でもいいと思っているのかしら?」
「……んなこと、ねぇーよ」
なんとも歯切れの悪い返事をした自分に、図星かと。そうツッコミを入れる余裕もなく、俺は項垂れるばかりだった。
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