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絶望 2
雪夜さんの長めの前髪で隠れた瞳は、オレを見ようとはせずにフローリングだけを見つめていて。トボトボと歩きながらお風呂場へ向かった雪夜さんの背中は、重たい何かを背負っているようだった。
そして、寝室に独り残されたオレはベッドにゴロンと横たわったまま起き上がる気になれない。オレは雪夜さんの気持ちを知りたいけれど、雪夜さんがオレに話してくれるかは分からないから。頭が冷静になればなるほど、心の中の不安は大きくなっていく。
仕事でミスしてしまったんだとしたら、雪夜さんはきっとオレに詳しい話はしないと思う。でも、雪夜さんがあんなふうになるような大きなミスをしたのかなって思うと、オレの選択は間違っていた気がしてしまう。
何もかも忘れたくてオレを求めてくれたんだとしたら、オレは雪夜さんを受け入れた方が良かったのかもしれない。
お風呂から上がった雪夜さんが、オレを避けたらどうしようとか。逆に何もなかったことのように、平然と笑っていたらオレはどうしたらいいんだろうとか。
暗い寝室に独りでいるオレの頭の中には、マイナスなことばかりが浮かんできて切なくなってしまう。
雪夜さんが話してくれるって前提で、オレは雪夜さんを拒否してしまったんだと……今更気がついても遅いのに、オレは今になってそのことに気がついて。柔らかい枕をぎゅっと抱きしめたオレは、自分がした選択を後悔した。
普段の雪夜さんは、オレに優しくしてくれるけれど。オレは、雪夜さんが常に優しい人でいることを強制してしまったような気がする。
それじゃなくても、雪夜さんは疲れていたのに。いつでもオレに優しくしてほしいなんて、オレはどれだけワガママな人間なんだろう。
雪夜さんを気遣って、オレは自分が話したいことを我慢した。でもだからって、オレが雪夜さんにワガママを言ってもいい理由にはならないのに。オレは気遣ったつもりでいただけで、雪夜さんには迷惑なものだったのかもしれない。
あのまま流れに任せていたなら、今頃きっとオレと雪夜さんの間に距離なんてないはずなのに。一緒の家にいるのに、こんなにも雪夜さんを遠くに感じるくらいなら……オレは雪夜さんとひとつになっていた方が良かったって、ウジウジ悩み始めたらきりがなかった。
ぐるぐる回るオレの脳内は停止してしまいそうで、まだほんの少しだけ熱が残ったままの身体は疲労感を訴えてくる。
仕事で疲れているのは、オレだって同じなんだ。でも、今日はちょっと嬉しいことがあったオレと、何があったかは分からないけれど、どう考えても何かあったらしい雪夜さんとでは気持ちの浮き沈みが違う。
常に同じ気持ちでいられるわけじゃないんだって、頭では理解している。だけど、実際にこうしてすれ違ってしまうと、どうしようもできない自分がもどかしくて。
「……オレ、やっぱり間違ってたのかなぁ」
どんな言葉をかけるのが正解で、どのような行動をとるのが雪夜さんにとって良いものだったのか。考えても考えても答えなんか出てこなくて、オレはそのまま眠りについてしまったんだ。
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