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絶望 3
オレが再び目を開けた時、オレの隣に雪夜さんの姿はなかった。寝起きの微睡んだ意識で、オレは途切れた記憶を今と繋ぎ合わせていくけれど。
……今って、何時だろう。
オレが寝ている場所はベッドの上、辛うじて布団は被っているけれど寒さを感じて目が覚めた。そして、雪夜さんがいないことを認識して落胆して……のろのろと動き、スマホを手に取り時刻を確認したオレは、大きな溜め息を吐いたんだ。
深夜と呼ぶべきか、早朝と呼ぶべきか。
そんな曖昧な時に独り目覚めたオレを、抱き締めてくれる相手はこの部屋にいない。
オレは、オレは雪夜さんの話を聞く予定だったのに。話を聞くどころか、雪夜さんはオレから距離をおいたまま。
まず、オレはその事実を受け入れるまでに5分使って。ベッドから起き上がるまでに10分かけ、寝室から出るまでに更にもう10分を費やした。
それでも、オレの元に雪夜さんがやってくる気配は全くなくて……虚しさを通り過ぎ、悲しみと怒りが混ざり始めた頃。オレは、ゆっくりと静かに寝室の扉を開けてみたんだ。
「……っ」
暗闇の中、捉えることのできた恋人の姿。
けれど、オレは雪夜さんに声をかけることができずに息を呑むだけだった。
リビングのカーテンが開けられ、静かな月明かりだけが部屋の中を照らしている。片脚を肘置き代わりにしてソファーに腰掛けている雪夜さんの姿は、室内の薄暗い色よりも更に暗く浮かんで見えた。
そう思ったのは、寝間着のスウェットが黒いからだろうか。それとも、寝室に残されたオレが寂しさを抱えているからだろうか。もしかしたら、今こうして雪夜さんの姿を扉の影から覗き見ている自分に、罪悪感を覚えたからなのかもしれない。
でも。
テーブルの上に置いてある煙草に手を伸ばした雪夜さんの横顔は見えなくて、オレは雪夜さんを視界入れるのがやっとだった。
無言の雪夜さんは、当たり前のように独りで。
ジッポを使い、咥えた煙草に火を点けていくけれど。
一瞬、ジッポの明かりで見えた雪夜さんの表情があまりにも無に思えて……そうして、室内には暗闇の中で紫煙だけが揺れていく。オレは、立ち尽くしたまま動くことができずに雪夜さんとの距離をただただ感じるだけ。
落ち込んでいるのか、苦しんでいるのか。
悩んでいるのか、何も考えたくないのか。
表情のない氷のような雪夜さんの横顔からは、雪夜さんが今何を思っているのか読み取れない。けれど、こんな時でさえカッコイイ雪夜さんは卑怯だと思った。
独りで雪夜さんの帰りを待って、言いたいことが言えなくて。求められた身体を差し出すことを拒み、あるはずのない答えを探して夢の中をさ迷って。
オレは、こんなにも寂しい気持ちを抱えているのに。それでも、雪夜さんのことを嫌いになれない自分がいるのが辛い。だから、雪夜さんは卑怯だって思うことで、オレの心は自分自身を保とうと必死になっているんだと思うけれど。
「……星?」
オレは、煙草を吸い終えたらしい雪夜さんと視線がぶつかってしまった。
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