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絶望 7

信じている愛情が、曖昧に揺らぐ。 好きとか、嫌いとか。 明確に表すことができるほど、オレの心がもっと単純で、もっと簡単になればいいのに。 雪夜さんの首元で光る指輪は、オレと雪夜さんを結ぶ物。オレの首についているチェーンにも、同じ指輪が通してあるけれど。 オレと雪夜さんがどんなに愛を誓い合っても、それは他人に理解されることのない契。2人の愛の結晶は、どれだけ繋がったって永遠にオレの身体に宿すことはできない。 だから。 ……泣いても、無駄なんだ。 「う……っ、はぁ」 分かっているのに、溢れてくる涙が憎い。 どうしてオレは、男として産まれてしまったんだろう。どうして、雪夜さんは男のオレを大切にしようとしてくれるんだろう。どうして、オレは男なのに雪夜さんの傍にいたいと願ってしまうんだろう。 もしも、本当に雪夜さんの子供だったら。 オレはもう、雪夜さんの傍にいられないのかな。 ……そんなの、嫌だなぁ。 嫌、か。 泣きながら、頭に浮かんだ言葉はオレの心を蝕むように雪夜さんを遠ざけていく。 「雪夜さんのっ、子供だったら……オレは、どうすればいいのか、分からない……ッ、けど」 「……星」 大好きな人の声、大好きな人が呼んでくれるオレの名前だけれど。いつまで、呼んでもらえるか分からない不安を抱えて聴くオレの名は、酷く弱々しくて。 オレは、オレの存在を受け入れようとはしないんだ。 「まだ、決まったわけじゃないけど……でも、雪夜さんは、雪夜さんはっ、絶対に、良いパパ、に……なれますから」 自分のことは、考えたくなかった。 相手の女性のことも、考えたくなかった。 けれど。 雪夜さんがオレに向ける優しさや愛情は本来、オレに向けていいものではないことだけは理解できたから。 「……オレ、少しの間この家を出ます」 「……なに、言ってんだよ」 死にかけた自分の中で、得られたひとつの答えを呟いたオレに、雪夜さんは声をかける。その表情は涙で滲んでよく見えないけれど、驚きと戸惑いを含んでいるように思えた。 だから、なんだろうか。 憎らしく感じるほどに溢れていた涙が少しずつ、流れる早さを落としていって。きっと、驚きと戸惑いを感じているのは雪夜さんよりオレの方だと思った。 「あの、雪夜さんを避けるわけじゃないんです。こんな状況になったらからって、雪夜さんをすぐに嫌えるほどオレが雪夜さんを思う気持ちは弱くありません」 落ち着いてきたわけでもなければ、冷静なわけでもない。強い意志があるわけじゃないし、未来を予知できる特殊能力もオレは持ち合わせていない。 でも、オレは想いを言葉にして紡ぐんだ。 「自分よりオレを優先する雪夜さんだから、雪夜さんはオレが傍にいたらこの問題にちゃんと向き合えないと思うんです。オレは雪夜さんのこと、信じてます……だから、雪夜さんにとって、何が一番大切なものなのかをこの機会に考えてみてほしいんです」

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