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絶望 10

いつもと変わりないようで、異なる雰囲気を漂わせる雪夜さんは新鮮だった。 これからする行為に、愛情は感じられないだろうと……分かっているのに、身体は素直に反応する。それが嬉しくもあり、悲しくもあるけれど。 「ゆきっ、や…」 オレの知らない雪夜さんをオレが感じていく度、雪夜さんの口角が片方だけ上がっていくのが分かる。オレを見つめているようで、何処か遠くを見ているような瞳。この眼に捕えられた人はきっと、こうして雪夜さんに抱かれることに虚しさは感じないのだろうと思った。 月の光がやんわりと薄れ、夜明けを待つ朝日が顔を覗かせ始めた頃。リビングのソファーで事に及ぼうとしているオレたちは、自然光に照らされながら互いを求め合う。 それは、欲望に塗れているようで。 我に返ると、なんとも気恥ずかしい。 「あっ、ん…」 交わす口付けは深くなる一方で、力が抜けた身体は雪夜さんに支えられてソファーに倒される。荒い扱いはされていないものの、優しさの欠片が剥がれ落ちていくような感覚は消えなかった。 次に進むためにオレの耳を噛む雪夜さんの唇も、オレが着ているパーカーの下にするりと潜り込む手も。何もかもが雪夜さんじゃないみたいで、でも確かにオレに触れているのは雪夜さんで。 感じたことのない不思議な気分を味わいながら、オレは与えられる快楽に溺れることに必死になった。でも、オレは無意識にスルスルとはだけていく衣服を掴んでいたようで。 「ふぁ…ん、やッ」 「イヤじゃねぇだろ、今更拒んでも遅せぇんだよ。俺は、お前の望みに応じてやってんだから…大人しくしとけ、いいな?」 「ぅ、ん…」 「イイ子だ」 雪夜さんの問いにオレが小さく頷くと、雪夜さんは切なそうに目を細めて笑った。 雪夜さんが乗り気じゃないのは、知ってる。 いつも通りを装っているつもりでも、雪夜さんから発せられる言葉に感情は篭らないから。 オレたち2人にとって、この行為は愛を伝え合うコトだったのに。その感情を内に秘めたまま、伝えることのない気持ちは胸の中で彷徨うばかりだ。 雪夜さんが欲しいと思っているのに、オレも雪夜さんも此処に存在しないような気分。まるで、初めて顔を合わせたばかりの他人同士のよう。 「あぁっ、ン…」 それでも、やっぱり身体は反応する。 耳から下へとやってきた雪夜さんの唇がオレの胸の飾りにふわりと触れ、少しばかり吐息がかかっただけ。それだけでも、オレの身体は悦んだ。 台本があるかのように次々と進む雪夜さんの手、それに合わせるようにオレは喘ぎ、そして息を吸う。 知らぬ間に脱がされていたパーカーも、セットで着ていたシンプルな寝巻きのズボンも。あれよあれよと剥ぎ取られていき、ラグの上に転がる。 肌着1枚で急所を隠して、身震いするオレの身体。雪夜さんを感じているはずなのに、この時のオレは全身で寒さを訴えていた。

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