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絶望 12
強過ぎる嫉妬心は、時として己自身に牙を向く。
どれだけ愛していても、オレと雪夜さんの繋がりの果てに形あるものは残らない。それが男女の違いだと言うのなら、オレは今まで雪夜さんが無だと思っていた行為に意味を持たせようと思う。
何人もの女性と、心が通わないセックスをしていた過去の雪夜さんに。
今、まさに。
オレを相手にして、その行為をしようとしている雪夜さんに。
絶望という名の、傷をつけよう。
「…ん、ぁ」
寒さで震えるオレの身体に、トロリと降ってきた液体。その正体はおそらくローションで、雪夜さんがまだ先に進む気でいることをオレは認識し、そして安堵した。
だからオレは雪夜さんが慣らしやすいように腰をあげ、自分でお尻を突き出すような体制をとる。
「…ッ、クソが」
小さく、本当に小さく。
オレの耳に届いた雪夜さんの声は、雪夜さん自身に向けられたものなんだろうと思う。
オレは、誰よりも雪夜さんを愛しているから。
だから、分かってしまうんだ。
どれだけオレたちが必死になっても、過去からは逃れられない現実があること。それを受け入れようとしているオレを、自らの手で傷つけていること。けれど、その傷すら愛おしいと思うオレに雪夜さんは敵わないだろうから。
……この世で1番、雪夜さんを愛しているのはオレなんだ。
「ふぁ…ッ、んん」
身体はしっかり覚えている快楽に身を任せ、雪夜さんの指先を感じ取る。それはもう、最大限の強がりで……オレは何度も歯を食いしばり、そうして時が過ぎるのを待った。
「うっ、ぁ…はぁ、ンッ!!」
耐え忍ぶような時間が過ぎ去ったかと思えば、やってきたのは待ち望んでいた雪夜さんとの繋がり。身体的な痛さは感じないものの、慌ただしく揺れていくオレの身体は雪夜さんに支配されていくような気分だ。
「ハァ…ん、く…ッ」
後ろから腰を掴まれて、何度も打ち付けられる快楽の波はオレから正常な呼吸を奪う。気持ち良くないと言えば嘘になるし、雪夜さんの呼吸も僅かに乱れていく。
けれど。
オレがどれだけ手を伸ばしても、掴めるのはソファーの生地だけで。雪夜さんに抱き着くことも、その肌に噛み付くこともできないままだった。
「…ハァっ、はぁ…ァ」
名を呼ぶこともできず、愛を囁くこともできない。
今、確かにオレは雪夜さんとひとつになっているのに。優しさも、愛情も、アンクレットも、指輪も……全てを失って繋がる身体は、快楽だけを得ようと足掻いて。
寄せては返す波の動きに腰が揺れ、その度に全身が雪夜さんを欲して疼くから。
「ん、はぁ…ア、ッ…んぁっ!!」
「…くッ」
お互いに快楽だけを求めて辿り着いた果てには、ズタズタになった心を隠し、無言でどちかともなく遠ざかる2人の姿があるだけだった。
その寸前に見えた雪夜さんの横顔は、乱れた前髪で見ることはできなかったけれど。雪夜さんの首のチェーンも外されていたことに気づいたオレは、全てを失い全てを受け入れた。
……ああ、やっと、終わったんだって。
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