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キミがくれたもの 3

雪夜さんへ この手紙を雪夜さんが読む頃、きっとオレはこの家にいないと思います。何をどう伝えればいいのか分からなくなって、手紙を残すことにしました。 雪夜さんが毎日、お互いの生活を支えようと努力してくれていたこと。仕事で忙しいのに、オレの話を聞いてくれたり、二人の時間を大切にしてくれたり…今までオレは、雪夜さんにとっても愛されているんだなぁって実感していました。 でも、オレはそれに甘え過ぎていたんだと思います。オレがもっと雪夜さんを支えられるような人だったら、もっと大人だったら良かったのかなって…そしたら、まだ二人でいられたのかなって考えてもみたけど、オレはオレでしかありませんでした。 雪夜さんがオレのために全て話してくれたこと、オレのお願いを受け入れてくれたこと、とても感謝しています。 こんなことにならなかったら、分からなかった気持ちとか、知らなかった感情をオレは雪夜さんから教えてもらいました。 だから、オレは後悔していません。 だから、オレがいなくても心配しないでください。 オレは少しの間、実家に帰ろうと思います。 あ、でも…父さんと母さんに、今回の件を話すつもりはありません。今のところは雪夜さんの子供だって断言できるものはないし、オレも両親になんて伝えればいいのか分からないので。 けど、雪夜さんが生徒さんとちゃんと向き合って、事が落ち着くまでは実家で過ごそうと思います。 『ずっと一緒にいてください』って、そう言ったのはオレの方なのに…約束、守れなくてごめんなさい。 だけどね、生徒さんが雪夜さんの子供じゃないと分かって、雪夜さんがまだオレとの未来を望んでくれるなら。その時は、ステラが持っている物をオレに届けてほしいです。 望みがあるのか、ないのか、よく分からないけど…それでもオレは、雪夜さんのことをいつまでも待っています。 オレ、雪夜さんの笑顔が大好きです。 大好きで、大好きで、どれだけ伝えても足りないから。だから手紙を書いちゃうくらい、オレは雪夜さんのことを愛しています。 でも。 もしもオレの想いが今の雪夜さんを苦しめているなら、オレが傍にいることで雪夜さんが悩んでしまうのなら。オレが大好きな笑顔で、雪夜さんが笑えないのなら。 オレが、雪夜さんに贈る言葉は1つです。 『雪夜さんなんか、大嫌い』 星より 何度も、何度も、書き直した跡が残る手紙。 液体が零れたような皺があちらこちらにあり、その液体が星の涙だと気づくまでに時間はかからなかった。 大嫌い。 その言葉の下には、消された大好きの文字があって。好きで、好きで、好きで……精一杯の想いを込めて弱々しく書かれた言葉は、愛してるの裏返しなのだろう。 使い古しの大好きよりも、真新しい大嫌いに込められた星の想い。俺の元から星は去ってしまったけれど、アイツの気持ちは手に取るように汲んでやることができた。 だからこそ俺は星を追うことも連絡をとることもなく、星がいなくなった家で独り、現実と向き合う決心がついたのだ。

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