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キミがくれたもの 4

仕事をして、帰宅して、食事を摂る気になれずに3日。独りで過ごすには広過ぎる我が家で、俺は今日も頭を悩ませる。 星のこと、飛雅のこと、茉央のこと。 それだけじゃなく、今後の仕事のことも。 俺は降り出しに戻り、最初からそれぞれのことを考えて。俺にとって一番大切なのは星だけれど、その前に解決しなければならない問題にどう立ち向かうべきかを模索していた。 「……誰だよ、まったく」 そんな時、部屋中に響いたインターフォンの音。23時を過ぎた時間に鳴ったソレはやけに煩く、俺は文句を垂れつつもモニターを覗き眉を顰めた。 そこに映っていた人物は、モニターを通して俺に語り掛けることをしない。無言で家に通せとアピールしているその姿に、俺はらしさを感じてソイツを家に招き入れるためロックを外した。 数分後、当たり前のようにやって来たソイツは俺を見てこう言ったのだ。 「星君のいないお前の家にまさか入れてもらえるとは想像していなかったよ、雪夜」 「俺も予想外だ」 ……本当に、何から何まで予想外なことだらけだ。 学生時代は、星以外立ち入り禁止だった俺の家。それが新居に移り変わり星と同棲してからというもの、訪問者が現れるようになったけれど。 男の呟きに妙な引っ掛かりを感じた俺は、とりあえずこの現状を把握するため玄関で突っ立っている眼鏡野郎をリビングへと通して。勝手にソファーを陣取ったヤツを横目で見つつ、俺はキッチンへ向かった。 「相変わらず、綺麗な家じゃないか。前来た時と殆ど変わりない、カフェでも開けそうだな」 「見学会しに来ただけなら帰れ……ってか、来るなら優じゃなくて王子だと思ってたんだけど。いや、2人でって言った方が正しいか」 思ったことを告げた俺は言葉の後に、星がいればだけど、と心の中で付け加える。去年の夏、星の誕生日に新居へやって来た光と優はまるで我が家のように寛いでいたことを思い出す。 けれど、今はそんなことをゆっくりと思い返している暇はなかった。 優を客としてもてなすつもりはないが、無意識にコーヒーを淹れ始めた俺に対し、優は薄く笑みを浮かべて。 「何しに来たのかは、大凡分かっているのだろう。俺が此処にいて、何故光がいないのか……先にお前の推理を聞くとしようか、コーヒーはブラックで頼むぞ」 「死ね、クソ執事」 俺は早くも優を家に入れたことを後悔しながら、2人分のコーヒーを用意していく。 星の兄貴の光と、光の恋人の優とは腐れ縁の仲。俺も優も青月兄弟の両親に挨拶を済ませ、今ではお互いにあの兄弟の恋人として親公認の付き合いをしているけれど。 光は高校教師、優は院生で。 俺と星も仕事があることを理由に、最近では連絡を取る事さえなくなっていた。そんな中、普段は礼儀正しいこの男が俺にアポを取る事もせずに押し掛けてきたのだ。 ……この家に、星はいないと分かっていて。

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