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キミがくれたもの 6
「……すまない、少し悪ふざけが過ぎた。そんな顔をするな、雪夜。おそらく、俺がお前の立場だったなら俺もお前と同じ選択をするだろう。俺はお前を責めにきたのではない、借りを返しにきただけだ」
少しの沈黙を破ったのは、優だ。
だが、どうやら優は俺を茶化しに来たわけではないらしく、酷く真面目な表情で俺を見ていた。
しかし、この男に貸したものが思いつかない俺は優に問い掛けて。
「言ってる意味がよく分かんねぇーんだけど、お前に貸したものなんてあったか?」
貸し借りをした覚えがない俺に、優は雪夜らしいと呟いた後にこう続けた。
「俺の元から去るはずだった男を、繋ぎ止めてくれたのは雪夜だからな。こんなこともなければ返すこともできない借りだ、だから俺が此処にいる」
……ということはつまり、借りを返すために光ではなく優が単独で俺のところにやって来たわけか。
懐かしい記憶が残る脳内で、優と2人で光の話した日のことが思い出されていく。あの時は、俺と優の立場が今とは逆だったから。
優らしい言動に、ありがたみを感じた俺は優に視線を向け煙草の火を消した。それを見ていた優は、ゆったりと息を吐いた後に声を出して。
「まぁ、順を追って話していこうか。お前の推理は見事だったが、異なる点がいくつかある。星君はランさんの心遣いで勤務にあたることはなく、その足ですぐに実家に帰ることもなかった。あの日は、お前に手紙を残した後にもう一度職場へと戻ったそうだ」
やはり、ランは気づいていたらしい。
不明点が浮かび上がってくるように、優は比較的ゆっくりとした口調で話す。
「全てランさんの計らいらしいが、星君は光と連絡を取り、待ち合わせ場所としてランさんの店を指定した。その間に光から連絡を受けた俺は、仕事を終えた光を連れてランさんの店へ行ったんだよ」
「んじゃ、その時点でお前らは星と俺に何かあったと踏んで行動したってコトか。そんで、お前らが来るまではランが星の見張り番をしてたと」
真っ昼間に星から連絡があり、勘が鋭い光は非常事態だとすぐに察したのだろう。けれど、仕事を放り出すことは出来ない光のことを考えたランは、実家に帰ろうとする星を引き止め職場を待ち合わせ場所として設けたらしい。
頭の回転が早いヤツらに支えられているのは、星も俺も変わりないのだと知った俺からは、安堵の笑みが洩れていくけれど。
「ランさんも含めて、お前達の間に何が起こったのか星君が詳しく話してくれた。だが、身も心も疲れ果てた星君の姿に、光のメンタルがもたなくてな」
「そんだけのことを、俺はやらかしたってコトか……分かってはいたけど、大事になっちまったわ」
星にとっては頼れる兄貴の光が、今回の件についてはかなりのダメージを抱えてしまったらしい。事を大きくはしたくないのだが、ここまで明るみになってしまったらそんなことも言ってられなかった。
……全ての原因は、俺にあるのだから。
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