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キミがくれたもの 9

現状把握を終え、今後の見通しを優と2人で立てた後。冷めたコーヒーを飲み干した優は、スっと席を立ち身支度を整える。 その姿を無言で眺めていた俺は、玄関へ向かう優の背中を追った。 言うべきことだけを伝え、確実に役目を果たした男は靴を履いて恋人とその弟がいる家へと帰るのだろうけれど。 「愛する人と伴に生きることは、簡単なことではないな。だが、俺もお前も今は生きる理由がある……死ぬなよ、雪夜」 玄関のドアを開けた優は、そう言い残して俺に微笑んだ。 「生き地獄みてぇーなもんだけどな、それも幸せだ。何があっても必ず迎えに行くって、それだけ星に伝えてくれ」 俺が告げた言葉に優からの返事はないままゆっくりと扉が閉まり、そうして無音の時が訪れる。けれど、目を合わせることなく頷き去っていった優が星に必要事項を伝えてくれると俺は確信した。 持つべきものは友、だとは思っていないが。 気づかぬ間に親しい友として俺と星の関係を見守ってくれる王子と執事には、素直に感謝する。今は、生きる理由がなかった頃の俺をよく知る2人が星の傍にいるのだから。俺からしたら腐れ縁のような関係だけれども、星からしたら光も優も兄として受け入れる存在だ。 こうなることを予想していたわけじゃないのに、時の運ってやつは残酷だと思う。 このタイミングで優がやって来たこと、星の現状を確認できたこと。残酷な中でも見えてくる未来は、少しだけ兆しがあるようにと願う俺からは自然と声が出て。 「……星」 再び独りになった室内で洩らした、恋人の名前。名を呼んだところで俺の声は届かないが、アイツの心にはきっと俺がいるはずだ。 俺の心に星がいるように、最愛の人を想う気持ちはお互いに変わりないと信じたい。 過去の俺が今の俺に出逢ったなら、俺は俺を笑うだろう。昔の俺は望んで恋愛がしたいと思ったことがなかったし、彼女が欲しいと思ったこともなかった。ただ、声を掛けられたらヤるコトはヤって、性欲処理の道具として女を扱っていたから。 その行為が今の俺を苦しめるとも知らずに、若気の至りで最大限遊び呆けていた過去の俺に出逢ったなら。俺は、俺を殺してしまいそうだとも思った。 どう足掻いても変えられることのない過去、けれど俺が否定したい全てを受け入れた星は今を生きている。 過去の俺が命を絶てば、星と出逢うこともなく何も得られない人生を終えていただろう。 全てが偶然で、けれどそれが必然。 こうして俺が今日を生きている今も、時が過ぎれば理由がある出来事として捉えることが出来るのかもしれない。 最愛の人が現れるなんて過去の俺は想像すらしていなかったが。星との出逢いは必然だったのかもしれないと、俺はふとある過去の情景を思い出して。 テーブルの上に置いてあった煙草を手に取り火を点つけると、俺は徐ろにベランダへと出て行った。

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