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キミがくれたもの 11

男に大事にされたいのなら、光を選ぶ時点で間違っている気がする。見た目は確かにキラッキラな王子様だが、俺より性格の悪いこの男に告白する女の気がしれなくて。 「大事に見せかけて遊ばれるだけだろ、お前は俺より質が悪い。そこを見抜けねぇー女だから、中途半端なことしかできねぇーんだろうな」 自分が抱いたはずの女だということを棚に上げ、そう言った俺の意見を光が否定することはなかった。 「自分が可愛いことを最初から自覚してる子の鼻をへし折る役目はユキが先にしちゃったから、正直面白味がないけどね……大事にされたいわけじゃなくて、顔のいい男を側に置いて周りの女に自慢したいだけでしょ」 高校生の俺たちにとって、彼氏彼女はステータスみたいなものに近いのだろう。恋だの愛だの語れるほど、俺たちはまだ大人じゃない。 広く浅い付き合いをする光には、ある意味丁度いい相手なのかもしれないが。 「まぁ、そんなとこじゃねぇーの。んで、お前はソイツと付き合うのかよ?」 光とその女が付き合ったところで、俺には関係ないし興味もない。ただ、暇潰し感覚で訊ねた俺とは違い、光は視線を落とし頷いた。 「うん、でも形だけかな。俺、弟のことでそれどころじゃないし……どうでもいい女の笑顔よりも、俺はせいの笑顔が見たいから」 光の弟、話では幾度なく登場する人物。 実際に会ったことも写真で見たこともないが、俺は光の弟の星くんのことをよく知っている。 現在中学2年生、引っ込み思案で大人しいタイプの男の子。容姿は綺麗な顔立ちをしている兄の光よりも愛らしく、漆黒の瞳と同じ色の髪が印象的らしい。 一度でも身体を繋げた女の名前も顔も興味がなく忘れていくのに、光の弟の話は何故か俺の脳内に残ったままで。 「……イジメ、まだ続いてんの?」 大事な大事な弟が、学校でいじめを受けていると。そのショックからか、表情を表に出さなくなってしまったと……前から俺に話していた光の言葉を思い出した俺は、新たな煙草に火を点け問いかける。 すると、光が纏う空気に輝きがなくなり、女のことなど眼中に無い王子様は浮かない顔をして。 「心因性記憶障害なんだって……限局性健忘って言ってね、限定された期間に起きた出来事を思い出せなくなっちゃうらしいんだ」 「限定された期間っつーのは、いじめられた期間ってことか……でもよ、忘れてる方が幸せってこともあんじゃねぇーのか?」 他人をいじめるほど俺は人に興味を持ったことがないし、喧嘩を売られたら買うまでだからいじめなんて問題には発展したことがなかったけれど。 辛い過去を忘れられるなら、俺だって忘れたい。失うことが全て悪だと捉えるのは違う気がして、俺は光に訊ねたが。 「ユキはさ、ユキは……笑い方を忘れても、それでも幸せだって言える?」 常に王子様スマイルを振り撒いてる光から問われた言葉は、この男とは掛け離れた疑問文で。返答に悩んだ俺は、声を出すことなく煙草に口づけるしかなかった。

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