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ブラザーコンプレックス 1

星side 雪夜さんと同棲していた家を出てから、3日目。色々あって、実家に帰る予定を変更し、優さんのお家にお世話になっているオレは、部屋の隅に座りクッションを抱えて丸まっている。 滞在1日目は、何処に居ればいいのか分からなくて。優さんのお家なのにも関わらず、オレは無意識に雪夜さんの姿を探していた。 基本的に、今まではオレが居る場所は雪夜さんの隣りだったから。優さんのお家でも、それは変わらなかったから……室内をウロウロと歩き回り、オレはそのうち泣き出していた。 だって、オレの居場所はなくなってしまったんだ。 それはオレが望んだことなのに、これでいいと思っていたのに。些細なことで気付く小さな変化に、オレの心はついていくことができないまま……優さんのお家で、オレは借りてきた猫状態、まるで人形のようにソコにいるだけの存在と化して数日。 こんな自分はいらない存在だと、オレが認識したのは2日目だった。それでも、兄ちゃんと優さんはことある事にオレを気遣い、そして存在の否定をしない。 オレだけが、この場にいちゃいけない存在だと思っていて。時折、その考えが馬鹿らしくなるくらいに兄ちゃんも優さんもオレを人として、弟として扱う。 ランさんから与えてもらった1週間の休暇、その間は優さんのお家でゆっくり過ごせるように、と。部屋の隅で丸まることを望むオレに、2人はオレ専用のクッションを買ってきてくれた。 それが今、オレが抱えているクッション。 雪夜さんも、ステラもいない。 そんな中で唯一、抱き締められる冷めた温もり。膝と一緒にクッションを抱え込んで、本当の人形になるまであと一歩のオレは、このまま消えてしまいたいとさえ思うのに。 「……せい、お待たせ。持ち帰ってきた仕事終わらせたから、一緒にお風呂入ろっか」 オレの兄ちゃんは、いつだって兄ちゃんなんだ。当たり前の生活を脱ぎさろうとしているオレに、兄ちゃんはいつも通りの王子様スマイルで微笑んでくる。 正直、お風呂に入る行動も今のオレには不必要に思う。けれど、大して動いてもいないのにオレの身体は勝手に汚れていく。部屋の隅に置きっぱなしのぬいぐるみのようにじっとしていたって、チリやホコリで汚れてしまう。 でも、お風呂に入らなきゃならないことは分かっているのに体が動かない。オレはたくさんの人からこんなにいっぱい優しくされているのに、今は声を出すことさえできない。 兄ちゃんの言葉に、ちゃんと反応しなきゃって。そう思っても、顔を上げるのがやっとなオレは兄ちゃんを見つめるだけだった。 「せい、大丈夫だから。苦しかったら苦しいって、辛いなら辛いって、ちゃんと言っていいよ。悲しい気持ちを隠して笑うのは、慣れてしまえば簡単だけど……でも、俺たちは人形じゃないんだ」 感情を殺してしまえそうなほど傷を抱えても、それでもオレたちは生きていかなきゃならない。過去のオレに舞い戻ってしまわないように、そんな気持ちが込められた兄ちゃんからの言葉はとても厳しいものだった。

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