155 / 170

ブラザーコンプレックス 7

「さて、星君もかなり回復したようだから、そろそろ今後の話をしていこうと思う」 オレが優さんのお家へ居候して、今日で5日目。そろそろ仕事復帰に向け、細かいことを考えなければいけないことは、オレも理解している。だから、オレは優さんの言葉にしっかりと頷いたけれど。  テーブルを囲み、オレの隣にいる兄ちゃんはどうやらそうではないらしい。 「優、そんなに改まらなくていいよ。せい、明後日からは俺と一緒に実家で暮らそうね?」 とても軽やかに、そして笑顔で。 そう言った兄ちゃんにも、オレはそれなりに頷いておいた。けれども今は、優さんの言葉の方が重要視されるから。 「家出してきたと思われないためにも、雪夜が出張で2ヶ月間家を留守にすると両親には伝えるといい」 「はい、分かりました」 オレが長期間実家に身を置くとなると、父さんも母さんも不思議に思うだろう。でも、優さんからの提案通りにすれば、怪しまれるリスクはかなり減りそうだと思った。 「雪夜とは既に口裏を合わせてあるから、そのうち雪夜から幸咲さんにも連絡がいくはずだ。だから星君は気を病まずに少しの間、実家で光と暮らすのだよ?」 優さんの言葉にオレは頷き、そして口を開く。 「ありがとうございます。でもオレ、雪夜さんが迎えに来てくれるまでは、連絡もしないつもりでいるんです。本当は今すぐにでも会いたいけど、それだと意味がないから」 「星君の気持ちも、雪夜はしっかり汲んでいる。必ず迎えに行く、と……彼奴は俺に、言付けを託したから。当分、雪夜との連絡は俺と光で行う予定だ」 そう言った優さんの微笑みはとても暖かく、頼もしかった。雪夜さんが優さんに伝えてくれた一言は、オレの心に一筋の輝きを与えてくれる。 「……まぁ、ある意味出張みたいなもんだよね。ユキは自分自身の過去に、懺悔しなきゃならないし。真実がどうであれ、ユキは星を見捨てることなんて絶対にしないよ」 雪夜さんと離れ、自分を見つめ直して。 ただ、雪夜さんを信じて待つ選択をしたオレを、兄ちゃんも優さんも後押ししてくれていることがよく分かる。 もしも、雪夜さんの話の全てが事実だったとしても……それでも、雪夜さんはオレを手放さないと、雪夜さんの過去を知っている親友2人が口を揃えて言うのだから。 オレには、心強い味方がいる。 そしてそれは、雪夜さんにも言えることだ。オレと雪夜さんを繋ぐ物は、今は何もないと思っていたけれど。 オレたちには、切っても切れない仲の2人がいる。優さんと兄ちゃんは、オレと雪夜さんとの距離を埋めようとしてくれるから。 「本当に、感謝します」 「せい、こちらこそだから気にしないで。ユキのこと、俺たちも一緒に待つからさ」 「星君、無理して独りで抱え込む必要はないからな。俺も光も、星君には頼られたいと思っているよ」 「ありがとうございます。オレ、オレのために雪夜さんを待ちます……だから、オレのわがままに、2人とも協力してください」 オレはもう、迷わないって決めたんだ。 そう胸に誓い、オレは尊敬する2人に頭を下げた。

ともだちにシェアしよう!