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ブラザーコンプレックス 9

「息子2人が揃うと、賑やかになるな……それも二ヶ月間か、あっという間に過ぎてしまうんだろう」 「あら、今から離れる心配してるの?父さんらしいわ、まったくもう」 自室からリビングへとやってきた兄ちゃんも加わり、ダイニングテーブルを家族4人で囲んで。ゆったりとしたティータイムで話す内容は、今までのこととこれからのこと。 「星が接客業なんて務まらないんじゃないかと心配していたけれど、続いているみたいでホッとしてるわ」 「せい、出勤はどうする?俺、車出そうか?」 「ううん、大丈夫……ここからなら電車で行けるから、問題ないよ。ありがとう、兄ちゃん」 家を出る時間はいつもより30分早めなきゃいけないけれど、電車でも充分通勤できる距離だから。 「星は運転しないからいいけれど、光が運転してるのはいつまで経っても慣れないわね」 「そりゃあ俺だって何もしなくていいならそうしたいけどさ、世の中そういうわけにもいかないでしょ」 学生の頃は優さんに甘え切りで、車の運転すらしなかった兄ちゃんだけれど。社会に出てしまうと、環境もガラリと変わるから。運転だけは自分でしている兄ちゃんは、母さんから鼻で笑われていた。 「2人とも仕事はきちんとしているのなら、あとは個人の自由だ。雪夜君と優君も同様だがな、私は2人と一緒に酒が飲みたい」 「父さん、どんだけユキと優に会いたいの。そんなにいいもんじゃないよ、あの2人」 母さんに貶された兄ちゃんを気遣い、父さんが兄ちゃんを庇ったかのように思ったけれど。父さんから続く言葉に、兄ちゃんは呆れ返ってそう言うとマグカップに口付ける。 「貴方たちが選んだ相手ですもの、会いたいに決まっているじゃない。早く自分に懐いてほしいのよ、父さん寂しがり屋だから」 「んー、でも雪夜さんはもう懐いてると思うけど。仕事の日程が父さんの休みと合わないから会えないだけで、雪夜さんも父さんと母さんに会いたがってたし」 ほぼカレンダー通りの生活の父さんと、シフト制の雪夜さんとでは休日が合わない。そんな雪夜さんの休みに合わせてオレもお休みをもらっていたから、こうして両親の顔を見るのはオレも久しぶりだけれども。 この先、雪夜さんがオレの両親に顔を見せてくれるのかは今のところ不明だから……雪夜さんが必ず迎えにきてくれると信じて、オレはいつも通りを取り繕う。 「お土産頼んであるから、雪夜君にはそのうち会えるわ。せっかくだから、優君にも会える口実を今のうちに考えておかないと」 「優はね、ガリ勉拗らせてるから会わない方がいい。父さんの相手なんて母さんしかしないんだから、夫婦2人で仲良くしてればいいんだよ」 オレが色々と考えを巡らせているあいだにも、家族の会話は弾んでいく。 「……幸咲、やっぱりペットでも飼うか」 「守さん、私たちこの前もそれで喧嘩したばかりじゃないの。私の気持ちは変わらないから、決めるのは貴方よ」 今日からの二ヶ月間、その先に待っている運命の選択を見据えて。オレがオレらしく生きていくために、神様から与えられた思考時間。それを最大限利用し、オレは今を生きていく。

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