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探偵ごっこ 1

雪夜side 星と離れて、5日目。 神に与えられた、僅かな時間。 2ヶ月という時を利用して、俺は過去を制裁しなければならない。 だが、その前に。 どうしても今、話したい相手に俺はダメ元で連絡を入れた。出勤前の午前中、内密になら会ってもいいと返事をくれた人の元へと向かう。 新幹線口を出た所にある、オレンジ色の看板の店。上の店舗が居酒屋になっているビルの、一階にある駅南のコーヒーショップ……この店で落ち合える人物は、過去に裏で俺の手を引いてくれた女性だ。 「久しぶりね、雪夜君」 柔らかな雰囲気は変わらず、温かな微笑みに包まれていく感覚は俺に申し訳なさを植え付けるけれど。 「幸咲さん、お久しぶりです」 星くんの母親、幸咲さんに嘘は一切通用しない。優と光の判断は正しいと思うが、2ヶ月もの間、やはりこの人を騙すことは困難だと思った俺は、星が実家に帰る前に事実を告げるべく、この場を設けていた。 「貴方が私を頼らなきゃならない時が来たってことは、今は星と不仲なのかしら?」 「いや、まぁ……不仲っつーか、もっと深刻で面倒なことになってはいます。全部俺が悪いんですが、それでも庇おうとしてくれる3人を責めないでやってほしくて……」 そう切り出した俺は、幸咲さんに現状のままを報告した。俺の血を引いた子供がいるかもしれないこと、星が俺に残していった手紙も含め、光と優の裏工作まで、互いを傷付けた性事情以外の全てのことを。 俺が自らの手で外した星の枷、それはどう繕っても誤魔化せない事実を物語る。そうなる前に、せめて幸咲さんにだけは俺から真実を告げておきたかった。 今回の件は、過去の俺の軽率な行動が招いたことだから。星も光も優も、あの3人がこれからつく嘘は、俺と共犯ではないと釈明したかったのかもしれない。 そんなことを思考しつつも俺が話している合間、幸咲さんは取り乱すこともせずに話を聞いていた。 そうして。 「……過ちが去ると書いて、過去と読むのよ。ソレに自分から向き合いに行く雪夜君を、あの子は止めなかっただけ……むしろ、行ってらっしゃいと背中を押すために距離をとったのね」 星が俺に残した手紙から、ゆっくり俺に向けられた幸咲さんの視線。正直、絶縁の申し出を覚悟でこの場にいる俺にとって、幸咲さんからの言葉は意外なものだった。 「星と出逢う前のことなら隠し通しておけばよかった話なのに、雪夜君はそうしなかった。しかも、まだ確定じゃないのなら尚更よ」 何故、幸咲さんはいつもこうして平然と笑っていられるのだろう。初対面した時も、幸咲さんは俺を叱ることなく穏やかに笑っていた。 全てを知っても、受け入れられるだけの器の大きさ。本来なら、俺は罵声を浴びせられても文句は言えないような立場なのに。 「すみません、俺が不甲斐ない男だからこんなことに」 まるで聖母のような微笑みに、今は後ろめたさを感じてしまう。席に着くために注文したホットコーヒーに口をつける気すら起こらず、俺は肩を落とすけれど。 幸咲さんは、あっさりと俺の意見を否定する。

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