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探偵ごっこ 2

「逆よ、雪夜君。人一倍誠実な貴方だから、こうなっているの。過去の過ちを恋人の親に話してでも、貴方は星と伴に生きていきたいのでしょう?」 問われた内容は、俺の心情そのものだった。 話さなくていいのなら、俺も話したくはなかったけれど。幸咲さんは、そんなに甘くはない人だ。それならば、バレる前にバラした方がこの人は星の力になってくれるだろうから。 「私に嘘がバレる前に、すべてを正直に自白できる雪夜君はとてもいい子よ」 すべてを見透かし、母として、俺に微笑んでくれる幸咲さん。俺がどんな思いでこの場にいるのか、それを多くは語らずとも理解している人。 「もっと早く、俺が行動を起こしていたら……そう思うと、後悔しかなくて」 出てきてしまった本音は、今更隠せない。 けれど、星の前では吐けなかった弱音も含めて声に乗せた俺に、幸咲さんは言葉を紡いだ。 「あら、後悔だって悪いものじゃないわ。今は自分の無力さを痛感しているんでしょうけれど、それも大事なことなのよ……雪夜君にとっても、星にとってもね」 どう考えても褒められるような内容の話ではないのに、幸咲さんは叱るより諭す姿勢を崩さない。 「嘘までついて貴方と星を庇おうとする光と優君も、もちろんいい子だわ……だから、主人の前では可愛い子供達の嘘に合わせておきましょう」 「……ありがとうございます」 「そんな顔しないで、雪夜君。母として、私を頼ってくれてありがとう」 「どんな結果になっても、俺は星を手放す気はありません。かなりの迷惑をかけますが、星のことよろしくお願いします」 「分かったわ、安心してちょうだい。どこへ出張しに行くかは知らないけれど、お土産よろしくね?」 クスクス笑ってそういう幸咲さんは、もうすでに状況を呑み込み、そしてそれを楽しんでいるんだが……嘘のような本当の話で、俺はこれから出張が控えている。 「それが、昨日通達受けたばっかで正直俺も驚いてるんッスけど……再来週から本部での会合に強制参加させられそうなんで、短期ですが出張はマジになりました」 「それなら良かったじゃない。本当の中にひとつだけ嘘を混ぜるのが詐欺師の技よ、雪夜君。守さんは明後日からの2ヶ月間、子供達の嘘に騙されたまま家族団欒を楽しむんだわ」 本当に可愛い人ね、と。 子供たちに騙されているとも梅雨知らず、息子の帰宅に喜ぶ健気な父親。その姿を想像して笑いが止まらないのか、旦那を嘲笑う幸咲さんの笑顔は光とよく似ている。 「雪夜君、詳細が分かったらで構わないから、星を迎えにくる前に私に連絡くれるかしら?」 「承知しました」 「内密にお願いしますね。私が雪夜君を独り占めしているなんて分かったら、守さんと星が拗ねちゃうもの」 少々語弊があるとは思うが、お互いにとっての意味合いはきちんと理解できる範囲内で幸咲さんは言葉を収めた。 秘密を握るのが、かなり上手い星の母親。 父親のことも子供たちのことも、手のひらの上でコロコロと転がしつつこれからの時を楽しんでいくのだろう。 俺がどう転んだとしても、幸咲さんが全てを知っているのなら……もう、恐れるものはなにもない。

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