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探偵ごっこ 7

高久成那と、茉央のあいだにいる子供。 それが、飛雅なのは間違いない。個人情報をむやみやたらと探りたくはなかったが、提出されている書類を見返し、飛雅の保護者欄に記された名を俺は確認済みだ。 「成那ってセナだろ、なんでナナ?」 本題に入りたいところではあるんだが、気になってしまったことを兄貴に尋ねてみると、飛鳥は俺に煙草を向けてこう言った。 「いや、ナナだろ。語尾重ねて呼ぶ方が愛着湧くし、そもそも成那って顔してねぇからな……良い意味ですげぇ優男だし、アイツはかなりのお人好しだから」 「……兄貴」 「んー、ナニ?」 ……どんだけキレイな顔して話てんだよ、このアホウドリ。 なんて、兄貴の前では口に出せなかった。 飛鳥の見たことのない儚い表情に、思わず息を呑んだ俺は、飛鳥から視線を逸らし煙の行方を辿るのが精一杯で。 兄貴の過去から真実を探らなきゃならない話の重さを感じ、俺は煙草の煙を吸い込んでいく。お互いが無言になること数秒、先に口を開いたのは飛鳥だった。 「やーちゃん?いつまでも黙ってちゃ分かんねぇだろ、その顔……お前、俺にクソほど言いてぇコトあんじゃねぇのか」 「いや、まぁ……そうだけど」 「口籠もっちゃって、可愛いヤツ。自分でできねぇなら、その唇無理矢理こじ開けて吐かせてやろうか?」 無意識に噛んでいた下唇に視線を感じ、俺は舌打ちする。兄貴のペースに振り回されるのは慣れているものの、余裕のない俺は今日も飛鳥の中で可愛い弟のままなんだと思った。 「まぁ、茉央がお前にナニしたかは知らねぇけど、ガキができたから成那と結婚するとしか俺は聞いてねぇよ……たぶん、茉央とはそれっきりだ」 動いてしまえば、こうも簡単に真実付近まで辿り着いたのに。その真実に触れることを恐れていた俺からは、溜め息しか出てこない。 絶妙なタイミングで運ばれてきた料理がテーブルに並び、店員が引いたその拍子を狙い、話を切り出そうと決めた俺は腹を括る。 テキパキと仕事をし、頭を下げて襖を閉めた店員。俺はそれを確かめた後、煙草の火を消した。 「……そのガキが、俺の子だって言われたんだよ」 「はぁ?誰に?」 ようやく兄貴に告げることのできた話は、飛鳥に鼻で笑われた。しかし、笑っている場合ではなく、俺は真剣に声を出す。 「飛雅の母親に、その茉央ってヤツにだ」 過去の呪縛は、今の俺を苦しめる。 俺だけなく、星のことも傷つけていった戒め。 だが。 「いや、ねぇだろ」 飛鳥はキッパリと、俺の発言を否定した。 しかしだ。 「過去にヤることヤった事実はあるし、過去すぎて覚えてねぇーことばっかだから、100パーなしとは言えねぇーじゃん」 ない、とは思う。 だが、完全否定できる術が今の俺にはない。だからこそ、ここまで話がややこしくなっているのだが。こうもはっきり否定されると、気持ちは幾分か楽になるのもまた事実だった。 けれど。 ゆったりと煙草を吸う飛鳥は、ニヤリと笑い俺を見る。その表情は、嫌な予感を俺に植え付け、そして。 「もし、あるとするなら……ソレ、俺のガキ」 驚愕の真相を俺に突き付けた飛鳥は、平気な顔をして笑っているままだった。

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