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探偵ごっこ 8

「俺のガキって……兄貴、マジ?」 「お前が死にそうになってんのに、嘘ついてどうすんだよ。それより、しっかり食え……食いながらで構わねぇから、やーちゃんが言いたいコト全部吐け」 そう言われ、ここに来店してからようやく食事をする気になれた俺は箸を持つ。まだ不明点は多いけれど、それでも俺が飛鳥の言葉で安堵できたことは言うまでもない。 そして、俺は兄貴の心遣いを知った。 兄貴が勝手に注文していた料理は、どれも俺を気遣う品ばかりが並んでいる。比較的胃に優しく消化の良い食材が選ばれていることに感謝しつつ、俺は高久親子についてのすべてを飛鳥に白状した。 どれくらい時間を要したのか分からないが、時々相槌や質問を交えつつ、俺の話を聞いていた飛鳥。 そんな飛鳥は大きな溜め息を吐いた後、煙草に火を点けて口を開いていく。 「茉央は、やーちゃんを巻き込んで……というより、お前はだしに使われたな……とりあえず、ガキの父親がお前じゃねぇことだけは俺が保証してやるよ」 「いやでも、飛雅マジで俺そっくりでビビるんだけど。あと、茉央の自信に満ち溢れた笑顔も妙に引っかかる……ってか、俺の子じゃなくても兄貴の子だったらどうすんだ?」 むしろ、俺が父親でないのなら十中八九……飛雅は、飛鳥の子だ。栗色で柔らかな髪質も、琥珀色の瞳も。血の繋がりがないとは言えない遺伝子が、飛雅に受け継がれてしまっているのだけれど。 「どうもしねぇよ、戸籍上の父親はナナ……成那だろ、家族の問題に口出しても意味ねぇからな」 飛雅本人を見ていないから言えるのか、はたまた飛鳥の本心からくる言葉なのか俺には読み取れない。 だがしかし、だ。 「俺のガキだとしたら、やーちゃんが父親って話はあながち間違いじゃねぇと思うぞ。茉央は言葉が足りねぇからな、お前には意味分かんねぇ話だと思うけど」 「分かんねぇーから、星と離れて、兄貴呼び出して、わざわざここで話してんだろうが」 俺の今までの気苦労が嘘のように、露わになり始めた真実。けれど、謎のベールに包まれたままの飛鳥の言葉は意味深なものも多くて。 「茉央のガキ、ソイツがまだ物心つく前から茉央がサッカーに固執した原因は、おそらくお前にある……それが、やーちゃんが父親だって茉央が断言した理由だ」 理解に苦しむ内容に、俺は眉を寄せ煙草を手に取った。俺と飛雅に血の繋がりがないのにも関わらず、どうしたらそんな解釈ができるのか俺にはさっぱり分からないけれど。 「……ただまぁ、そうなるとそのガキは確実に俺の子ってコトになるわな。認知してねぇけど」 「認知するもナニもねぇーじゃん、兄貴は今の今まで飛雅の存在すら知らなかったんだろ?」 「当時から知ってたとしても、俺は認知しねぇよ。ソレをアイツもよく理解してるから、茉央はナナと結婚したんだろうしな」 「いや、意味分かんねぇーわ」 「俺が出てくんの、アイツはずっと待ってるハズだ。茉央のことは俺に任せて、やーちゃんは星くんを取り戻すことだけ考えろ」 ……誰のせいだ、アホウドリ。 とは言えないのが辛いが、頼みの綱は兄貴しかいないこともまた事実だった。

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