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探偵ごっこ 10
飛雅がスクールに来る曜日や時間、そして茉央の迎えの時間帯等、俺はがっつり兄貴に情報を漏洩した。
しかしながら、表向きはスクールのタイムスケジュールを兄貴に伝えただけだと弁明できる範囲内に収めた情報だ。
俺の仕事に差し支えがないように配慮された飛鳥の言動は、素直にありがたいと思えたけれど。おそらく、俺が出張でスクールにいない間に何かしら起こることは俺でも予想できる。
そんなことを考えつつ、兄貴とは店で別れ、その足で俺が向かった先は星の職場だ。
夜の営業もあと僅かで終わり、店が閉まる時間……その時を狙い、来店した俺は現状をオカマ野郎に伝えるべくカウンターの一番奥の席に腰掛けた。
「……あら、随分とお疲れね」
「ラン、星は大丈夫そうか?」
話したいことは色々あるが、それよりもまず知りたいのは星のこと。昼間のこの店でギャルソンエプロンを揺らす恋人は、俺の手から離れても笑顔を絶やさずにいるのだろうか。
「大丈夫よ、一週間の休暇できちんと心の整理をして職場復帰しているわ。今の貴方よりも、星ちゃんの方が吹っ切れている感じね」
「アイツは、俺以外からもちゃーんと愛されてんだよ……けど、お前にまで迷惑かけて悪かった。それと、ホントいつもありがとう」
無言のまま俺に向けられるランの微笑みと、差し出されたホットコーヒー。ランのその優しさに、愛されているのは星だけじゃないことを知る。
「偉かったわね、雪夜……あの子の意志を尊重して抱くなんて、受け入れる側の星ちゃんも辛かったでしょうけれど、貴方の傷だって相当深いでしょう」
「別に俺は……って、お前の前で強がっても意味ねぇーか。すげぇーしんどかった、もう二度とあんな抱き方したくない」
痛手を負ったのは星も俺も変わりない、と。
どちらか一方だけでなく、二人での行為に互いが傷ついたことをランに見抜かれ溜め息が漏れた。
「貴方の恋人は男前よ、それにしっかり応えてあげた雪夜もね。貴方たち二人なら、離れていてもこの壁を乗り越えていけるわ」
カウンター越しで独り立つランの横に視線を移し、そこに存在するハズだった人を思う。俺は、このオカマのためにも星と伴にこの先の人生を歩んでやりたいから。
「俺さ、さっき飛鳥に会ってきた……んで、やっぱお前の言う通り、飛雅は飛鳥の子で確定だった」
知ってしまえば、簡単なことだった。
その真実を告げ、俺はランと向かい合う。
「そう、貴方の無実は証明されたわけね。でも、あのバカったら……本当にどうしようもない男だわ、どこまで外道でいれば気が済むのかしら」
「兄貴には、心当たりがあるっぽかったけど……ただ、兄貴も知らない間に産まれてた子供だった」
けれど、俺には無関係だと思うことができないのは、飛雅の父親は俺だと飛鳥も茉央と同じ結論を出したことだ。
そして、それが理由で飛鳥が自分の子だと断言していたことも気にかかる。
「元はと言えば、飛鳥が蒔いた種でしょ。本当に、ちゃーんとタネ蒔いて花までさせてるんだから」
なんともオカマらしいランの発言に、俺は苦笑いを隠せない。俺のタネで咲いた花ではなくて本当に良かったと、そう思いたいのは山々なんだが。
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