3 / 17

 バスルームから出ると、海斗はソファに深く凭れたままスマートフォンを弄りながら先程のビールを飲み干していた。  初対面の男の部屋でこれほど寛げるものかと呆れを通り越して感心する。 「――おいっ」 「んあ?なぁに~?」 「抱いて欲しいんなら、その前にやることあるだろ?」  のそりと体を起こして首を傾けた海斗は、俺の全身を上から下まで舐めるように見てから、ふ~んと鼻を鳴らした。  何となく感じが悪い……。こんなガキに値踏みされているみたいで嫌だ。 「思ったより筋肉質……。ジムとか行ってるの?」 「それなりに」 「――ここでする?それともベッド行く?」 「誘うならもっと雰囲気出せよ。ガキが……」 「俺はどこでも構わないよ。恭輔さんが気持ちよくさせてくれるなら、どこでも……」  海斗は気怠げにその身を起こすと、はだけたバスローブもそのままに俺のもとに歩み寄り、その長い手足を体に纏わりつかせてきた。  湯上りにひんやりとした感触が心地よかったが、すぐ近くまで寄せられた熱っぽい眼差しにそんな余裕はすぐに消え失せた。  俺を誘うようにねっとりと自分の唇を舐めては、頬を包み込むようにしなやかな手を添える。 「期待……しちゃってもいいのかなぁ」 「当たり前だ」 「楽しみっ!寝室どこ?ベッド行こっ――と、その前に」  いきなり体を離した海斗は脱衣所に向かうと、何やら掌に握りしめて来た。 「はい、これ!」 「何だ……これ?」 「チョコレート。でもねぇ、ただのチョコじゃないのっ。ちょっと媚薬入り」 「お前、それってヤバいヤツじゃないのか?それに俺は甘いものは好きじゃない」 「あれ?ビビってる?恭輔さんらしくないね……。大丈夫!これはね、お互いが気持ちよくセックスするための小道具みたいなもんだから。知らない者同士が初めてセックスするわけでしょ?途中で萎えたりしたら興醒めじゃん?」  キャンディーの包み紙のようなビニールに包まれたチョコレートを指先で摘まんで、自らの口に放り込むと「美味しい」と幸せそうな顔で微笑んだ。  海斗の容姿といい、その様子といい、ヤバいドラッグに手を出しているようには見えない。  アダルトショップに陳列している、いわゆるセックスドラッグの類なのだろう。  今は摂取しやすいようにチョコレートやキャンディ、グミのようなものが多い。 「ほら……恭輔さんもっ!」  包み紙を開き、ポカンと開いたままの俺の口に放り込まれたそれは、ビターの香りが強く甘みはほとんどなかった。  俺が自然に受け入れたのは、予想していた甘さがなかったことと、目の前で悪戯っ子のように見上げている海斗の期待に応えるためだった。 「ね?美味しいでしょ?一緒に気持ちよくなろっ」  鎖骨にチュッと派手な音を立てて俺の腕を掴んだ海斗は、嬉しそうに誘った。 (こいつ、完全な誘い受けか?)  相手をさんざん翻弄し、煽るだけ煽って受け入れるタイプのネコ。  この手の奴は妙に色気のあるタイプが多く、自分の魅せどころをすべて心得ている狡猾なところがある。  一連の海斗の行動を見ていると、まさしくそのタイプに合致する。  ここ数年、こういった雰囲気でセックスになだれ込んだことがないだけに俺も混乱したのだろう。  海斗がその気で誘っているとなれば、俺としても好都合だ。  両者合意の上で行われることだ。朝になって“話が違う”という揉め事に発展することは極めて少ない。  声をかけてきたのもセックスに誘ったのも海斗だ。俺はそれに付き合ってやっただけ……。  独りで寝るには無駄に広いダブルベッドが置かれた寝室は間接照明だけが灯り、皺ひとつないシーツは今朝メイキングしたままの状態で俺たちを待っていた。  ベッドカバーを引きはがすように捲り、そのベッドにダイブするように寝ころんだ海斗はすっかり着崩れたバスローブが煩わしいのか、腰ひもを解いてそのまま大の字に仰向けになった。 「このベッド、いい感じだねっ。ラブホの安物とは大違い!」 「あのなぁ……。ラブホと一緒にするな」  これからセックスをするとなれば、その場の雰囲気も前戯の一つに含まれるものだ。  ゆったりと体を重ねて挨拶代わりのキス、体が温まってきたところで相手の感じるところを探るように愛撫して……。  そういった流れをことごとく乱しているのがコイツだ。  俺だって最初から言葉で責めるわけじゃない。だんだんと互いがノッて来たところで相手の弱いところを抉るように言葉を紡ぐ。レイプ願望があるというような特殊な性癖を持った相手でなければ、俺も紳士的に接するのだが……。  顔に似合わない立派なモノを曝け出したままベッドに寝ている海斗に呆れながら、俺はため息をついてその端に腰かけた。 (調子狂うな……) 「――ねぇ」  心の声が漏れてしまったのかと思うタイミングで海斗が話しかけてきた。ビクッと揺れた肩を誤魔化そうとサイドテーブルに置かれた煙草のパッケージを意味もなく手に取る。 「何だ?」 「恭輔さんって、俺のこと怪しいとかって思わないの?いつもこんな感じ?声かけたり、かけられたりしたら簡単にこの部屋に入れちゃう人?」 「この部屋に入れるかどうかは、その時の状況によるな……。ホテルで済ませる時もあるし、相手が指定する場合もある」 「ふ~ん。恭輔さんってモテそうだよね。なんか妬ける……」 「さっき会ったばかりのお前に嫉妬なんてされたくない。いいか?お前とはこれっきりだからな。それを承知で声をかけてきたんだろ?先に言っておくが、俺は最初からそのつもりだ」 「――遊び人。誰か一人の事を真剣に好きになったことないでしょ?」 「ガキのお前に言われたくない。俺は誰かに束縛されるのが大嫌いなんだ。俺とのセックスが良かったからって付き纏うなよ。ただ、俺が認めたらちょっとは付き合ってやってもいい」  我ながら思わせぶりな事を言う。  まだ体は重ねていないのに、また会ってもいいかな……と思わせる海斗の雰囲気に完全に吞まれていた。  一夜だけと割り切るのは、後々面倒な事に巻き込まれないため。  だが、海斗を飼いならしてみるのもいい。その辺で引っかけた相手と面倒なプロセスを繰り返すぐらいなら、俺が飽きるまで遊ぶのも暇潰しにはなる。 「それ、ホント?じゃあ、俺……頑張っちゃおうかな!」 「審査は厳しいぞ。ガキのお前に出来ることなんて、たかが知れてる」 「やってみなきゃ分かんないでしょ!ほら……っ」  力任せに腕を引っ張られ、ベッドに倒れ込んだ俺に圧し掛かるように海斗の体が重なる。  予想通りの滑らかな肌は触れていて心地いい。 「――じゃあ、気持ちよくさせてくれ」 「りょうか~い!」  軽口を叩いて海斗は俺の唇を啄み始める。  最初は小鳥が餌を突くように、次第に強引に割って入ってきた舌に口内を蹂躙され野獣のような激しいものへと変わっていく。 (くっそ……マジでキス、上手いっ)  ねっとりと舌を絡ませる海斗の顔が見たくて薄目を開ける。やはり薄く目を開けて俺を見つめながら角度を変える彼のやたらと艶のある表情がすぐそばにあり、思わず息を呑んだ。  大学生の分際でこれほど色っぽい顔をするなんて……。相当遊んでいるに違いない。  俺は大人の余裕を誇示し続けるために、思わず漏れてしまう吐息を必死に我慢した。  彼の指先が胸の突起に触れ、果実を弄ぶかのように転がし始めると、さすがに限界が訪れた。 「んぁ…はぁ……お前……そこ、やめ……っ」 「いや?ぷっくり膨らんで、凄くいやらしいよ」 「言う……なっ」  体をずらしながらその突起を唇で食み、舌先で突くように刺激されれば、さすがの俺も我慢出来なくなってくる。  力任せに体を反転させて、海斗を捻じ伏せようかとも思うのだが、上手く体が動かない。 「はっ……な……っ?体…う…ご、かない」  海斗の背中に手を回してみても力が入らずにだらりとシーツに落ちてしまう。それなのに下肢には激しいまでの熱が集まり、フルに勃起したペニスは蜜を溢れさせてビショビショになっている。その茎を押さえ付けるかのように海斗のペニスが重なり、先程からクチャッと粘着質な音が聞こえてくる。 「あはっ。恭輔さんの凄く硬い……!もうぐちゃぐちゃだよ?キスだけでイッちゃいそう?」 「ばか……言え!そ…簡単に……イク、かぁ――んはぁっ」  重なった二人の間に手を差し込んだ海斗は、俺のペニスをやんわりと掴むと、先端に親指を押さえ付けた。  そして、そこに時々爪をたてながら上下に扱きあげてくる。 「んあぁ……イイッ……!」  体を起こして俺の腿に跨るような格好で見下ろす海斗は、ペロリと赤い舌を覗かせると、そのまま自らの口に咥えこんだ。 「ううっ……!」  その衝撃は女性の秘所の感触に酷似していて、予想以上に気持ちがいい。  唇で程よい強さで挟まれ、口内ではバキュームを繰り返しながら舌を絡めてくる。  前戯の段階で、これから食おうとする相手からここまで丁寧に昂ぶらせてもらうのは初めてだ。  やはり俺の目には狂いはなかった……。  ジュボジュボと激しい音を立てての口淫に、思わずシーツを掴む。  海斗はキスだけでなくフェラチオの才能もあるようだ。これで後ろの加減が良ければ完璧だ。 「――っはぁ!恭輔さんの大きいから顎、痛くなっちゃうよ。でも……美味しい。ねぇ、バリタチの恭輔さんがあまり経験したことないイイ事してあげようか?」 「は?――何だよ…それ」 「フーゾクのお姉さんが良くやる事。前立腺マッサージ」 「お前なぁ……。ガキのくせによくそんな事知ってるな?そんなもん、経験あるに決まってるだろ」 「へぇ…。こんなイケメンでもフーゾクとか行っちゃうんだぁ。お姉さんたちテンション上がるね」 「うるさい!無駄口叩いていると、容赦なく突っ込むぞ!」  さっきまでの快感が薄れかけ、海斗の手技で喘いでいた自分を誤魔化すかのように声を荒らげた。  しかし、海斗はどこ吹く風と言った顔で俺を見下ろしている。 「じゃあ……俺も突っ込んじゃうよ」  自分の人差し指に舌を絡め、糸を引くほど唾液で濡らした指を俺の後孔に押し当てると、本当に突っ込んできた。 「――うっ」  第一関節まで挿れて、引き抜いては蕾の周囲を解すように撫でる。それを何度か繰り返しているうちに、俺のペニスから蜜が溢れ始めた。  その蜜を指に纏わせ、またじわりじわりと奥へ突き込んでくる。  意外にも海斗の指は骨ばっており、関節が行き来するたびにムズムズした感覚が背筋を這い上がってくる。 「一本は誰でもすんなり入るよ。じゃあ、二本に増やしてもっと奥、行くねっ」  片手でペニスを扱き、もう片方は後孔にあてがわれている。  グッと薄い粘膜を広げ、二本の指が入り込んでくると、さすがに異物感が凄い。  元来排出器官であるその場所は異物の侵入を防ごうと、蠢動を繰り返しヒクヒクと震える。  その蠢動がある場所を通過した時、今度は内部に引き込むように動き始める。これには俺も焦った。 「んあぁ……やめ…っ!抜け……っ」 「恭輔さんのお尻、力入れてキュッと締まると、奥も痛いほど締め付けるよ。もっと力抜いて……」 「い…やだ!早く……抜け…っ!」 「ここを優しく擦りながら奥にいくと――ん?ここ?」  海斗の指が俺の中のある場所を掠った時、無意識に腰が跳ねた。  同時に悲鳴ともつかないあり得ない声が出ていた。 「ひあぁぁ……んっ」 「当たり!恭輔さんのいいところ、見~つけたっ」  明るく笑いながら指を抜き差しする海斗に、俺は込み上げてくる射精感を何とか抑えようと、奥歯を食いしばり首を振った。 「――一度出しちゃおうか…。あ、勿体ないからちゃんと口で受け止めるから安心して?」 「やめ……ろ!」 「あ、もしかして出しちゃうと次にいけないタイプ?恭輔さんの事だからその点は大丈夫だよね?はぁ……いい具合に濡れて来た。ほら、聞こえる?お尻の音……」 「うぁ……や、やめ……て……はぁ……っく」  グチュグチュと卑猥な音を立てているのが自身の後孔だと思い知らされ、羞恥心と快感とが入り混じり、何ともいえない気持ちになってくる。  海斗の指が激しく動き、前立腺を的確に捉えていく。その場所を集中的に刺激されれば、プロの手技でなくとも男であれば誰もが射精する。 「あ…あぁ…イ…イク…ッ」 「俺の口に出していいからね。あ~ん」 「ばっ……やめ……ぐぁぁ……イクッ!」  それは一瞬の出来事だった。灼熱のマグマが隘路を一気に駆け上がり、頭の中が真っ白になった。  まるで打ち揚げられた魚のように大きく体を波打たせ、俺は思い切り欲情を吐き出した。  しかも海斗の口内に……。 (なんなんだ……今のはっ)  後孔に指を突っ込まれ、口淫を施されながらの絶頂は今までに経験したことがないくらい気持ちが良かった。  大きく胸を喘がせてうっすらと目を開くと、視界がなぜか滲んで見える。  何度か瞬きを繰り返していると、目尻から涙が一筋流れ落ちた。  下肢の方に目を向けると、上目遣いで俺の顔を見つめながら残滓の一滴までも絞り取るかのようにバキュームを繰り返す海斗の姿があった。  慌てて目を反らし、羽枕に頬を埋めるようにして羞恥に塗れた顔を隠すことが、今の俺に出来る精一杯だった。  愛らしい唇に白濁を残したまま体を起こした海斗は嬉しそうに上げた口角を手の甲で無造作に拭った。 「――恭輔さんの精子、濃くて美味しい……。どう?気持ち良かったでしょ?っていうか、恭輔さんってソッチの才能あるんじゃない?」 「バカ言え……」 「あぁ!泣いちゃってる……。可愛いっ!泣くほど良かった?」 「泣いてないっ!」 「じゃあ……今度は俺を気持ちよくさせてよ。まだまだ、イケるよね?」  あれだけ大量の精を吐き出したにも関わらず、俺のペニスは力を失くすどころか痛いくらい張り詰めていた。  きっと、先程彼に食べさせられたチョコレートのせいだろう。大学生ぐらいが気軽に買える値段ならば、目を瞠るような効果は期待してはいなかったが、どうやら甘く見ていたようだ。  先程から俺の視界でものすごい存在感を放っている海斗のペニスがぶるんと揺れている。  俺自身もそう小さい方ではないと自負しているが、彼のイチモツはさらに迫力がある。  これで激しく突かれたら、女性ならいとも簡単に昇天してしまうだろう。 「そう言うくらいだから、もう準備は出来てるんだろうなぁ?すぐにでも突っ込んでやるぞ」 「もう~!そう焦らないでよ。ジェルとゴム、ある?」 「あぁ?」 「俺、こう見えてもセーフティセックス推奨者だから」  俺は無言のままベッドの脇にあるナイトテーブルの抽斗を指さすと、海斗は嬉々として俺の上から飛び降りた。  抽斗から常備しているジェルのボトルとコンドームの入った箱を取り出すと、ベッドの俺の足元に放り投げた。  そしてもう一度、俺の腿を跨ぐように腰を下ろすと、ジェルのボトルを掴み寄せて掌に粘度のある液体を落とした。  それを慣れた手つきで自らの後孔に撫で付ける。時々、息を詰めているのは指で中に押し込んでいるせいだろう。  その顔がやけに色っぽくて、俺の体は期待に満ちていた。  媚薬のせいで萎えることのない欲望の証は、節操なく先端から透明な蜜を垂れ流している。  出来ることなら、コンドームなどつけずにすぐにでも突っ込みたい衝動に駆られてはいたが、それではあまりにも余裕がないと思われてしまう。  ここは大人の対応を……と思いながらも、海斗が体を捩じりながら念入りに後孔を解しているのを生唾を飲み込みながら眺めていた。 「――んっ。イイ感じ」  クチュリと音を立てて引き抜いた自分の指を見せつけるように舐めて、今度はコンドームのパッケージを咥えて封を切ると、これまた手際よく俺のペニスに被せていく。 「恭輔さんのここ……すっごく硬くなってる。あのチョコレートが効いてる証拠だね」 「ごちゃごちゃ言ってないで、さっさとしろっ」 「そんなに俺に挿れたい?正直に“焦らさないで”って言ったら?」 「誰が言うかっ!早くお前に突っ込んで、良し悪しを見極めたいだけだっ。無駄な時間は俺にはない」 「素直じゃないなぁ……。じゃあ、恭輔さんのココで俺を見極めてよ」  海斗は俺のペニスに手をかけて数回扱きあげると、自らの腰をわずかに浮かせて解したばかりの蕾に先端を押し当てた。 「――いくよ?」  まるで俺を試すかのような口調で言い放った海斗は、ゆっくりと腰を下ろしていった。 「っん……あぁ……はぁ、はぁ……思ったより、キツイ……」 「当たり前だ……俺のはその辺のヤツより……っく…ぅ…っ」  彼の自重で何の抵抗もなく奥へと突き込んでいく。わずかに身じろぐたびに中の粘膜がざわりと揺れ、俺の剛直を優しく包み込むように呑み込んでいく。  入口も程よい締め付けがあり、海斗も興奮しているのか中は熱を持っていた。 「っく……はぁ!入ったぁ!ほら、見える?恭輔さんの根元まで全部入ってるでしょ?」  繋がった場所を大胆にも足を広げて見せてしまうあたり、もう少し恥じらいというものがあった方が可愛げがあるのに……と海斗の大雑把な性格を残念に思いながらも、ピンク色の薄い蕾が目一杯口を広げて俺のペニスを咥えている様子は酷く煽情的で、それだけで下肢に熱が集まっていく。 「あんっ!今、ピクンッて中で跳ねた。恭輔さん、興奮しちゃってる?」 「俺の上に乗ったってことはお前が動くつもりなんだろ?さっさと動け」 「冷たいなぁ……。せっかく気持ちよくなろうとしてるのにさぁ」 「分かった、分かった!ほらっ」  ムッと頬を膨らました海斗に小さくため息をつきながら腰を突き上げると、その顔はすぐに愉悦の表情へと変わった。  細く引き締まった白い腰が俺の動きに合わせるように揺れる。それに伴い彼の長大なイチモツも大きく揺れた。 「あぁ……奥、当たって……気持ち…いいっ」  騎乗位という体位は正直好きじゃない。上から見下ろされ、主導権を握られているように錯覚するからだ。  この体位は上にいる相手が気持ちよくなるためのものだ。自分の思うように動いて快楽を得る。  だが、今夜は少し違っていた。  海斗の中はうねるように俺のモノを包み、時にキュッと締め付けるのが堪らなく気持ちがいい。  最奥に当たる先端も心地よい振動と感触に蜜を溢れさせている。  そのおかげで短時間で解した――バスルームで事前に準備していたのかもしれないが――わりには程よく濡れ、抽挿の度にクチュクチュと卑猥な水音が聞こえてくる。 (ヤバいな……これは)  さっきの媚薬のせいだけではない快感が、全身を駆け巡っていく。 「やぁ……っんふ……イイ…ッ」  艶めかしい海斗の喘ぎ声が部屋に散らばり、空気をより淫靡なものへと変えていく。  彼の腰を掴んで支えてやると、半開きの口元から舌先を覗かせてさらに煽る。  こんな時まで自分を魅せる術を心得ている彼を“淫乱ビッチ”と嘲笑いながらも、そんな彼の色香に酔っている自分がいた。 「恭輔…さん、凄い…。俺……ハマりそ…っ」 「ハマってる…だろ……っが!」  海斗が上体を前に倒して俺の唇を塞ぐ。互いに息を荒らげながらも舌を絡め合った。  トクン……。  彼のうっとりとした眼差しに心臓が大きく跳ねた。徐々に心拍数が上がり、体中に熱が籠ったように火照ってくる。 「ん…んっ」  積極的に唇を貪りながら腰を振る海斗、そして舌先が痺れたように動かなくなり思考も曖昧になっている俺。 (おかしい……)  そう思った時はすでに、俺の体は自分の意志ではまったく動かなくなっていた。  海斗の腰を支えていた手にも力が入らず、だらりとシーツに落ちた。  唇を離してフッと口角をあげて笑った海斗は、俺の目尻にそっとキスを落とした。 「可愛い……。やっと薬が効いてきたみたいだね」 「な…なっ……う…っ」 「ちょっとだけ睡眠薬混ぜておいて良かった…。ホント、手間がかかる人だなぁ」 「おまっ……あ……うぅ……」  声を出そうにも喉が締め付けられて怒鳴る事も出来ない。ぼんやりとする視界の中で彼の優し気な顔だけが見えた。  俺に媚薬と一緒に睡眠薬を仕込んで、一体何をするつもりなんだ……。  問いたいことは山ほどある。だが、体が動かない。 「――凄いね。体は眠っているはずなのにココは変わらずガッチガチ。こんな状態じゃツラいよね?イキたいよね?」  彼の中を抉っていたモノが、腰を浮かしたことであっさりと抜けた。  それでも真上を向いて勃ち上がっている雄姿を海斗は愛おしそうに眺めている。  その茎に手を添えて、被せられていたコンドームを乱暴に引き抜くと、新たなパッケージを手に取り唇に挟んで封を切った。  まだ射精はしていない。それなのに新しいコンドームをどうするつもりなのだろう。  目を開けようとするが視界が大きく揺れる。  海斗は自分の長大なイチモツを数回扱くと、先端からコンドームを被せ始めた。 (な…何をする気だ)  ぐったりと弛緩した体をシーツの上でモゾモゾと動かしてみるが、全くもって無駄な抵抗だった。  彼はいきなり俺の両足を抱え上げ膝裏に手をかけると、こともあろうに大きく割った。 「はぁ……綺麗な蕾がぴくぴくしてる。まだちょっと慣らし足りない気もするけど、ジェルで何とかなるかな」 「う…うぅ!」 「あれ?まだ意識あるとか?ま、いいや……」  片手で両足首を持ち、シーツの上に転がっていたジェルの容器を手に取ると、その細い筒先を何の躊躇なく俺の後孔に突っ込んだのだ。 「ひ……ぅっ」  ひんやりとした粘度のある液体が体内に押し出され、俺は目を見開いた。 (まさか…、まさか…だろ!)  もう嫌な予感しかしない。背筋を冷たいものが走ったのを感じたが、自由が奪われた俺はなすすべもない。 「――一緒に気持ちよくなろ。ね?恭輔さん……」  そう言って俺が敗北を認めるほどの長大なペニスの先端をジェルに塗れた蕾に押し当てると、力任せに腰を突き込んだ。 「ふ……がぁぁぁぁっ!」  メリッという音と鋭い痛みが下半身を襲い、俺は目の前が真っ暗になってそのままフェイドアウトした。

ともだちにシェアしよう!