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「――んあぁ…っ、ちょっと……待て!お前は……っ!」
「はぁぁん!恭輔さんの中、気持ちいい~っ」
彼が大きく腰を動かすたびに、ぴりっとした痛みが後孔に走る。
薄い粘膜で覆われた蕾が目一杯に広げられて、女性の手首ほどあるのではないかと思うほどの太さを誇る灼熱の楔が俺を貫いている。
時々、尻たぶにチクチクとしたものが触れるのは、きっと彼の下生えだろう。
想像はしたくないが、あの大きなものが俺の後孔に根元まで入ってしまっているという事実……。
突き込まれるたびに、内臓が下から押し上げられて何度もえずいた。
俺の腰を掴んで一心不乱に腰を振りたくっている男――そう、守屋海斗だった。
レイプ犯のフリをして俺を拘束し、今に至っている。
彼の声に気付いた時にはもう、俺の後孔は彼のペニスを受け入れた後だった。
「はぁはぁ……恭輔さん。好き~ぃ」
可愛い声でうわ言のように呟きながらも、腰の動きは少しも劣らない。
「海斗!お前なぁ~っ!――っあぁ」
「感じてる?恭輔さん、俺のチ〇コ感じてる?」
「感じ…るわけ、な、いだろっ!さっさと……抜け!この……ゲス野郎!」
「嘘だぁ……。だって、これ……硬くなってるよ」
前に回した手が俺のペニスを扱き上げている。萎えたままピクリとも反応しなかったはずのそれは、かつての勇姿を彼の手の中で見せてる。
「はぁ?!う…嘘だっ」
「嘘じゃないよぉ~。ほら……いやらしい蜜をダラダラ垂らしちゃって!EDとか嘘ついてもダメだからね」
「いや…!はぁはぁ……嘘じゃ、ない……って…っんぁぁ!何だ……これ…っ」
ここ数ヶ月、忘れていた男の感覚。
腰の奥の方がムズムズと疼き、自然と腰が揺れる。
海斗が鈴口に爪を食い込ませると、俺は声をあげて背をしならせていた。
「やぁっ……それ、やだぁ……!」
「この体はあの夜の事を覚えていてくれたんだね……。嬉しいっ」
「じょ…冗談じゃない!誰が……お前の……な、ん……あぁぁ、ダメ……海斗、やめ、ろっ」
尻たぶに力任せに腰をぶつけてくる海斗の楔が最奥を突き上げる。
腸の奥の奥、そこを抉るように硬い先端が刺激するたびに、内腿がブルブルと震えだす。
前の方ではクチュクチュと蜜を絡ませながら上下に動く手は止まることがない。
(な、なんだ……この感覚はっ)
言葉には出したくない。でも――ここ数ヶ月味わいたくても味わえなかった快感が、体の中で熱と共に渦を巻いてすべてを呑み込んでいく。
「――き、き……もち……いぃ」
「えぇ?聞こえないよぉ~!」
「気持ち……イイ…って言ってん、だっ!」
「俺もだよ…。俺も最高に気持ちいいよぉ……。ねぇ、恭輔さんのイイ顔見せて」
海斗の手が俺の目を覆っていたネクタイをそっと解く。
急に視界が広がり、焦点が合い始めると目の前には壁のタイルが迫っていた。
振動で揺れる視界から逃れようと肩越しに振り返ると、そこには恍惚の表情で腰を振る海斗の姿があった。
金髪の髪は就職のために染めたのだろう。落ち着いたダークブラウンの柔らかな髪が汗で額に張り付いている。
それでも気にすることなく、あの天使のような綺麗な顔立ちのまま凶暴なペニスを突き込んでいた。
「――はぁ…可愛い。あの夜と一緒だぁ」
歓喜してうっとりとため息を漏らす彼が挿入角度を変えた時、俺は全身を痙攣させて顎を上向けたまま達していた。
「ひゃぁぁぁぁっっ……くぅ!」
彼のペニスが前立腺を擦りあげたのだ。目の前も頭の中も真っ白になり、タイルにしがみ付く。
久しぶりに吐き出した精液はかなり粘度が高く、彼の手をドロリと流れ落ちた。
「もうイッちゃったの?――随分と濃いね?もしかしてEDってマジバナ?」
俺はなかなか息が整わず、鯉のように口をパクパクさせながら何度も頷いた。
背後から伸びて来た海斗の手が俺の顎をとらえて、開いたままの口に骨ばった指を咥えさせられた。
その指には俺が今吐き出したばかりの白濁がべっとりと纏わりついていた。
「――ね?濃いでしょ?自分じゃイケなかったの?」
舌先でその指を恐る恐る舐めてみると、青い匂いが鼻から抜けた。
呑み込もうとするが喉に絡みついてむせ返った。
「ねぇ、それって俺のせいとか言わないよね?俺、優しくしてあげたつもりだったんだけど」
確かに――。意識がない間に好き勝手やってくれたことで苦痛は免れた。だが、俺のプライドは玉砕した。
海斗は俺の口から指を引き抜くと、唾液と精液に汚れた指を愛おしそうに舐めた。
舌先で掬うように丁寧に舐めとる様は酷く煽情的で、俺はまた下肢に熱が集まってくるのを感じた。
「美味しい……。恭輔さんのモノは全部美味しい」
うっとりと目を細めた彼はいきなり突き込んでいたものをズルリと引き抜いた。
「あぁ……っ」
体を貫かれていたモノを失い、バランスを崩して膝から落ちるところを海斗の腕に支えられる。
俺よりも十センチほど身長が低く、一見華奢に見える彼だが、その力は目を瞠るものがあった。
足に力が入らずに踏ん張ることの出来ない俺を前から抱き抱えるようにして洋式便器の蓋の上に座らせると、纏わりついていたスラックスと下着を引き抜き、両足を開いて壁に取り付けられている手摺に引っ掛けた。
ぐったりと便器に座る俺は、ぽっかりと口を開けた後孔を彼に晒しながら力なく顔をあげた。
決して暑いとは言えない季節にワイシャツは汗で濡れ、ジャケットは皺になっていた。
そのシャツのボタンを外しながら、海斗は俺の髪に何度もキスをしてくれた。
「恭輔さんのエロい顔見ながらしたい……」
自身のスラックスも脱ぎ捨て、彼は舌舐めずりでもするような目で俺を見下ろした。
「どうしたの?”殴るぞ“とか言わないの?ねぇ……」
「も……わかん、ねぇ。お前……何なんだよ?」
「何って……俺は恭輔さんが好きだから」
「は?」
「だからこの体は誰にも渡さないっ。俺だけのモノだからねっ」
すっかりシャツの前を開けられ、俺は成すすべもなく蛍光灯が灯る天井を見上げていた。
海斗の手が俺の乳首を円を描くように撫でていく。久しぶりに、しかも急激に与えられた快感のせいで乳首はピンと立ったままだ。それを指先で摘まんで捏ねるように弄ぶ。
「う……っは。やめ…ろ……」
「乳首も感じるんだ……。じゃあ、これは?」
「ひぃぃぃ……っ」
ぎゅっと力任せに捻った時、痛みと同時に甘い痺れが背筋を走り抜けて、俺は胸を突き出すようにして声をあげた。
だらしなく広げられた足の間では、また力を取り戻したペニスがプルンと揺れ、白濁交じりの蜜が糸を引いている。
下生えに蜜の滴が垂れるたびに、後孔がヒクつく。
「可愛い~っ!恭輔さん……俺の恭輔さんっ」
「んぐ……っ…ぅう」
乳首を摘ままれながら唇を重ねる。即座に入り込んだ海斗の舌が俺の口内を犯す。
歯列をなぞるように動く舌が、逃げる俺の舌を絡め取り、なかなか解放してくれない。
息継ぎさえもままならない激しいキスは俺の脳みそを蕩かしていく。
(やっぱり、キス……上手い)
初めて出会った夜もそう思った。彼のキスは今までに経験したことがないくらい気持ちがいい。
それを性感帯と化してしまった乳首を弄られながらされるなんて夢のようだ。
このまま快楽の泉に浸っていたい……。ずっと彼とキスしていたい……。
目を細めて彼の綺麗な顔立ちをぼんやりと見つめていると、愛おしい唇は離れていってしまった。
俺は無意識に舌をのばしてその唇を追いかけた。
それに気づいた海斗はもう一度舌先同士を突き付けてくれた。
「――あぁ、恭輔さん。もう、我慢できないよ……」
決して萎えることのない自身のイチモツを扱き上げながら俺を見下ろす目は底なしにエロい。
わずかに潤んでいるせいかもしれないが、通常の二割――いや三割増しで色気がダダ漏れている。
彼は長大なペニスの先端を再び俺の後孔に押し当てる。今度はすんなりと先端を咥え込んだ蕾は嬉々として、彼の茎をきゅうきゅうと締め付けてしまう。
「んもうっ、焦りすぎだって!ホントはもっとゆっくり時間をかけて抱いてあげたいんだけど、今日は許して……。俺、もう……余裕ない」
「んぁぁ!はぁ……は、はっ」
躊躇なく一気に根元まで突き込んだ海斗は、言葉の通りハイペースで腰を揺すり始めた。
まだ大学を出たばかりの若者だ。それに加えて性に対しては誰よりも貪欲な海斗のことだ、ここは猿に犯されていると思った方がいいだろう。
俺は彼に体を揺さぶられながら、自身のペニスを扱き上げていた。
「気持ち……いいっ。海斗……もっと奥……っ」
「もっと?恭輔さんって意外と欲しがり屋さんなんだね!嬉しいっ」
海斗は唇の端を片方だけ上げて満足気に微笑むと、激しく腰を動かした。
パンパンという肌がぶつかる破裂音が狭いトイレの中に響く。外ではもう何度目になるかも分からない発車を促すメロディが鳴り響いていた。
「あぁ……も、ヤバい…。イキ、そ…」
「はぁはぁ……俺も……また、イク……」
「いっぱい出してあげるからね。恭輔さんの中に」
「中…?あぁ……なか、出して…くれ」
快楽に侵された頭では自分が何を言っているのか分からなくなっていた。
もう、なんだっていい。
今は出したい!今まで出せなかったモノを思い切り出したい!
「あ、あっ……恭輔さん、イクよ……出すよっ」
「俺も……はぁ、はっ……あ、イ……イクッ!――っくぅぅ」
「あ、あ、あ……イクっ!――っうぉぉ!」
腹に飛び散るほどの大量の精子に俺は体を大きく震わせた。同時に腹の奥の方で灼熱のマグマのような奔流が弾けたのを感じて、その熱で内腿が小刻みに痙攣した。
俺の中で海斗のペニスがドクドクと脈打っているのを感じる。それは長い間止まることがなかった。
「――っく……はぁっ!最高っ!」
肩で息を繰り返しながら、大量の精液を吐き出してもなお太さを維持したままのペニスを引き抜いた海斗は俺に覆いかぶさるようにキスをした。
ぽっかりと開いたままの後孔からトプリと音を立てて熱い粘液が滴るのを感じながら、俺はだんだんと薄暗くなっていく視界に身を任せるようにして意識を失った。
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