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第15-1話クウェルクの狙い

   ◇ ◇ ◇ 『クウェルク様、なぜ貴方様がここへ?』 『お主を助けるために決まっておるだろう。それと、退魔師どもを内側から懲らしめてやろうと思ってな』 『お気持ちは嬉しいのですが、何も貴方様が直々にいらっしゃらなくても……』 『奴らがあり得ぬと思うことをせねば、我らは追いやられるだけ。まさか一番滅したいと望んでいる相手が、自ら懐に飛び込んでいるとは考えもしないだろう。逃げ回るより安全で、奴らに致命傷を与えられる……悪くなかろう?』 『しかし……弱き者を人は容易に傷つけます。恐らく貴方様へむごい仕打ちをしてくることでしょう。やり過ぎる者も出てくれば──』 『案ずるな。これでも人を選んで捕まってやった。あのビクトルという男、強き者と戦いたがる質の人間。弱き者を虐げることは恥と考える奴だと知った上で利用したのだ』 『そうは言われましても──』 『大丈夫だ。私はここで機を見て、奴らを欺き通してお主を助ける──しかし、なんだ。このようなか弱き姿でやり取りするのは落ち着かぬな』  クウェルク様の言葉に、俺は思わず借り物の全身を大きく前倒して頷く仕草を見せる。  今は昼間。  俺とクウェルク様は引き離され、隔離されている。  明るい内は動けぬと思わせ、外で生きる者の体を借りて活動する──俺は蝶の体を、クウェルク様はネズミの体を借り、屋敷の陰でやり取りしていた。  会話も思念で交わしているから、声も聞かれはしない。何も知らない者から見れば、ネズミが蝶の踊りを眺めるだけの微笑ましい光景なのだろう。  小さな手で耳を掻き、ネズミの鼻をヒクヒクとさせてからクウェルク様は俺に語る。 『私は今、屋敷の地下牢に閉じ込められている。ずっと使われていなくて埃まみれだ。起きているとクシャミが止まらぬ』 『そんな劣悪な環境に……ビクトルの奴め。この身が自由になった時、真っ先に我が剣で切り刻んでくれる』 『まあアレを悪く言うことはない。奴も驚いていたからな。本来は魔の者を捕らえて放り込む場所だというのに、まったく使われていなかった……最初からカナイを入れる気がなかったということだ。そして何があっても使う気がない。力でお主を押さえ切れるという自信の表れだ』  クウェルク様の指摘に俺は蝶の体をフラつかせてしまう。ミカルとのことを思い出し、この身がめまいを覚えてしまったからだ。 『どうしたカナイ?』 『いえ……ミカルから言われたのですが、ミカルは個人的に魔の者を人へ戻す道を探っていると。だから吸血鬼の王である俺に協力して欲しいと』 『……ほう。上手くいくのであれば、いい攻め方だな。命を残しつつ、魔の者という存在そのものを滅するやり方だ。我らが根源を消そうと考えるなど、なんとも容赦のないことだ』

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