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第4話
side 水城
「――え?馬鹿?」
「……るさいな。僕だって分かってるよ」
僕の隣で呆れたように珈琲を口にしたのは友人の堂崎 。親友で、僕の秘密を知る唯一の人物。まあそんな彼にも現在進行系で呆れられてる訳だけど。
「何で?好きだったならこのまま続ければ良かったのに。わざわざ自分から止めにしようなんて、チャンス投げ出したようなもんじゃんか」
「…………分かってる。分かってるよ、だけど……」
鷹島 泰生 、彼を好きになったのは大学一年の頃。
恋に落ちたのは二度目に見た時。
初めて鷹島の存在を知ったのは、たまたま居合わせてしまった告白現場だった。
顔を真っ赤に染めた女学生に対して鷹島は無表情に近く、何とも冷めた様子で「悪いけど好きになれない」と告げた。
当然涙ながらに立ち去って行く女学生を見て、何もそんな言い方しなくてもと同情したことを覚えてる。
だけどその涙さえ鷹島には響かなかったようで、去り際僕の存在に気付いたようだったけれど何一つ反応はなかった。
正直、あまりいい印象ではなかったんだ。
だけど二度目に彼を見かけた時。
まるで別人なんじゃないかと目を疑った。
何て温かくて、何て優しい表情をするんだろうと見惚れた。
それから自然と目で追うようになって、鷹島が柔らかな表情を向けるのは吾妻と言う彼の幼馴染にだけだと気が付いた。
好き、なんだろう。きっと鷹島は吾妻の事を。
鷹島の目はいつだって吾妻を追って、僕の目はそんな鷹島を追って。
いつからか鷹島のその目に僕が映ればいいのにと、そう思うようになって。
だからあの日、僕は叶わない恋に踏み出したんだ。
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