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第5話
「――だけど、何?」
「…………最近の鷹島は優しすぎたから」
「はあ?全然意味分かんないんだけど?」
「誤解してしまいそうになる。もしかしたらって思って、想いを告げてしまいそうになる。でも……」
あの女学生に向けてた冷たい目も忘れられない。もしあの目を向けられたら……。
「………………」
堂崎はもう一度珈琲を口にすると、間を入れずに言葉を吐いた。
「意味分かんないと言えばこの状況もだよ。なーんでこんな真昼間にファミレスに呼ばれたんだっけ?」
「そ、それは…………」
踏み出した恋から五年。
鷹島とセフレになって五年。
僕は昨日、その関係に終止符を打った。自らの手で。
終わりにしよう、そう告げた僕に鷹島は静かに「何故だ」と問た。
当然の返しだ。僕は予想通りの問いに用意していた言葉を紡ぐ。「恋が叶った。だから鷹島との慰め合いは終わり」だと。
次の鷹島の言葉も想定済みだった。優しいアイツはこう言うんだ。「おめでとう」ってね。
計算通りだった。全て。
そこまでは。
「…………最後に相手に会わせてくれ、ねぇ。何で了承しちゃうかな」
「だってセフレって関係を始めたのは僕で、止めるって言い出したのも僕で。そのぐらいの我儘は聞いてくれるだろって言われたら、何も言えなかった……」
「で、代役を俺に頼んだと」
「…………ごめん」
鷹島がそんな事を言うだなんて予想外だった。
だって今の今まで僕の恋の相手については、何も聞いてこなかったんだ。興味がないのだと思ってた。
「いいけどさ、変に修羅場とかならないよね?俺、殴られたりとかは嫌だよ?」
「それは大丈夫だと思うけど…………あ、来た」
ファミレスの入口に見えた鷹島は、何故だかスーツ姿で走ったのか息が上がっている。
「何でスーツ?」
「……さあ?」
声を潜めた堂崎に倣って僕も声のトーンを落とし首を傾げる。
鷹島はすぐに僕達に気が付くと、こちらへ足を向け「遅くなった」と頭を下げた。
そこまでしなくてもと僕と堂崎は慌てて立ち上がり、席に座るよう促したけれど鷹島は険しい表情を浮かべ動こうとはしない。
「鷹島?どうしたの……?てか何でスーツなんて――」
「――これ詫びの品です」
僕の言葉を遮って鷹島は堂崎に紙袋を一つ差し出した。
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