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「折ったって……、え……?」  さっぱり訳がわからない。すると南原は。ぼそぼそと話し始めた。 「今日の柔道の時間、福井と組んだんだよ。体格差があるのはわかってたから、最初は加減してた。そうしたらあいつ、本気でかかってこいよって言い出して。俺も、元々あいつにムカついてたから、だんだんムキになってきて……。それで思いきり投げたら、そんなことに。救急車を呼ぶ騒ぎになってさ、先生にはずいぶん怒られたよ」 「はあ……。それで福井、ここに入院したんだ」  午前中の救急車はそれだったのか、と百合人は驚いた。 「でも、どうして福井にムカついてたの?」 「――それは」  南原は、なぜかちょっと赤くなった。 「だって、花岡を傷つけたから……。挑発されたからだけじゃなく、心のどっかで、復讐してやりたいって思ってたんだと思う」  南原は、急に真剣な顔になると、百合人のベッドの端に腰かけた。至近距離で見つめられ、百合人は動悸が激しくなるのを感じた。 「だけどさ、後悔した。福井を骨折させたからじゃない。そのせいで、結果的にお前と同じ病院に入院させることになったから……。それがきっかけで、お前と福井が親しくなったりしたらどうしようって……。でもあいつ、まだこの部屋には来てないんだよな?」 「来てないって。来るわけないだろ。福井は、僕を嫌ってるんだから」  南原の話は今ひとつ理解できないが、取りあえず百合人はそう答えた。すると南原は、目をつり上げた。 「花岡、もっと警戒しろよ。お前、鈍すぎるぞ? 福井は、ガキなんだよ。ああいう態度を取るのは、お前に構ってほしいから。気づかねえ?」  百合人は、唖然とした。 「構ってほしい……?」 「ああ。なかなか見舞いに来なかったのも、顔を合わせづらかったからだよ。……って俺、馬鹿か。何、恋敵(ライバル)のフォローしちゃってんだ」  百合人は、今度こそ耳を疑った。  ――聞き違いか? 今、恋敵(ライバル)って……。 「花岡」  南原が、ずいと近づく。 「俺は、お前が好きだ」

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