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 ――嘘だろ。  かあっと、体全体が熱くなる。まるで、体中の血が沸騰しているようだった。 「な、南原……」  かろうじてそう口にすれば、南原は急にうろたえ始めた。 「あ! 悪い。どさくさに紛れて告白しちゃって……。でも俺、前からお前のことが……。気持ち悪い、よな? 男にこんなこと言われても」  南原が、気まずそうに立ち上がろうとする。百合人は、思わず引き留めていた。 「待って!」  南原が、こちらを向き直る。百合人は、決意を固めた。正直、彼が自分を好きだなんて、まだ信じられない。でもこれは、千載一遇のチャンスだ……。  百合人は目を伏せて、小さくつぶやいた。 「気持ち悪いなんて、思わない。……実は僕、男が好きなんだ。それで、その……。僕も南原のこと、ずっと好きだった」  南原が、息をのむのがわかった。 「……本当に?」  百合人は、こくりとうなずいた。恥ずかしすぎて、目を合わせられない。 「花岡……」  南原が、再びベッドに腰かける。先ほどよりも距離が近い気がして、百合人はドキリとした。 「花岡、こっち向いて」  言葉と同時に、そっと手を握られる。おそるおそる顔を上げれば、南原もまた、赤い顔をしていた。 「すげえ嬉しい。てかその顔、可愛すぎ……」  そっと、顔が近づいてくる。展開の速さに、百合人はぎょっとした。後ずさって逃げようとしたが、南原は握った手に力を込め、放そうとしない。狭いベッドの上では、逃げ場はなかった。  ――いっか。好きな相手、なんだし……。  これがファーストキスか、などと乙女チックな感慨に浸りながら、目を閉じる。唇に、南原の吐息がかかった。そして、いよいよ唇が触れ合おうとしたその瞬間……。 「ギャーッ」   百合人は、絶叫していた。全身を、すさまじい激痛が襲ったのだ。そのまま百合人は、ベッドに倒れ伏した。

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