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”
するとアポロンは、やや不機嫌そうに答えた。
『終わってなどいるものか。我々に、死という概念はない。皆オリンポスの山頂から、人々を見守っている』
確かに、神が死ぬことはないか。百合人はひとまず納得した。
「なるほど……。でもアポロンさん、肖像画とはちょっと違いますね。てっきり、光の輪をかぶっているものかと」
『あれは、人間の想像の産物だ。全く、もっと美しく私を描けぬものかな』
ぶつぶつ文句を言った後、アポロンは百合人をじろりと見た。
『そして、お前の元に来たのには訳がある。お前は先ほど、私を夢で見たと言ったな? あれは、夢などではない』
えっと、百合人は思った。この男……アポロンを夢で見たのは、五歳の時だ。当時百合人は、父親の仕事の都合で、アテネに住んでいた。せっかくだからと、両親は名所へ連れて行ってくれたものだ。そして、あの夢を見たのは……。
「リトホロ!」
百合人は、叫んでいた。
「オリンポス山の麓だ! 僕、家族とそこへハイキングへ行って……。じゃああれは、夢じゃなかったというんですか?」
『その通り』
相変わらず冷たい口調で、アポロンが答える。どうやら、百合人に怒っている様子だ。
――僕、何か罰当たりなことでもしたのかな……?
あれこれ思い巡らせていると、アポロンはカッと目を見開いた。
『お前のせいで、可愛いカリスタを逃したではないか! 罰として、お前には魔法をかけた。お前は、一生キスをしてはならぬ!』
びしりと指を突きつけられて、百合人は唖然とした。
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