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『ええい、ダプネのことは口にするでない! そんな態度では、魔法を解く方法を教えてやらぬぞ!』
「え!? 魔法を解く方法があるんですか? それは、是非教えてほしいんですけども!」
百合人は、ベッドの上に正座すると、アポロンに向かって頭を下げた。
――これで、南原とキスができるかも……。
『そんなに、キスがしたいのか? さっきの男とか?』
「はい。……彼が、好きなんです」
百合人は、真剣にうったえた。
『ふむ』
アポロンは、口の端をつり上げた。何だか、意地悪そうな笑いだった。
『それは、難しいかもしれぬな。魔法を解く条件は、一つだ。……七たび、失恋せよ』
「へ……、失、恋……?」
百合人は、ぽかんと口を開けた。
『その通りだ。お前、まだ恋に破れたことがなかろう? 私がカリスタを失ったのと、同じ苦しみを味わうのだ。それも、七たび。そこでようやくお前は、キスをする資格を得るのだ。ま、その辛さに耐えられれば、だが』
百合人は愕然とした。確かにこれまで百合人は、失恋というものを経験したことがない。それは、恋愛対象が男だったからだ。ほのかに想いを寄せる相手はいても、告白する勇気がなかった。必然的に、ふられることもなかったわけである。
――今から、七回誰かにふられりゃいいのか? じゃあ、告白しまくればいいってこと……?
するとアポロンは、百合人の心を読んだかのように、こう続けた。
『言っておくが、本気の失恋でないとだめだぞ。真剣に好きになった相手に拒絶されて、初めて一回とカウントする』
ダメだ、と百合人はうなだれた。高校卒業まで、もう二年を切っている。それまでに七回も恋をしてふられるだなんて、無理に決まっている。第一、南原が待っていてくれるわけがない……。
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