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”
――何てこと宣言してくれてんだよ……。
百合人は狼狽した。確かに百合人の方も、南原を好きと言った。おまけに、キスを受け入れる様子まで見せたのだ。南原からすれば、交際がスタートしたと思っても当然かもしれない。でも、早速喋るなんて……。
「ただでさえ痛めつけられてんのに、泣きっ面に蜂だっての。……でも、おかげで俺も吹っ切れたかなって」
福井は、ちょっと微笑んだ。彼には珍しく、素直な笑みだった。
「今まで、変に絡んでごめんな。どうにかしてお前と話したかったんだけど、きっかけが思いつかなくて……。でも、南原と付き合い始めたんじゃ、もう俺も諦めるしかないからさ。ああいうの、もう終わりにするわ」
南原が言ったことは、やはり当たっていたのか。唖然とする百合人に構わず、福井は怒濤のように喋り続けている。
「あーあ、俺って馬鹿みたいだよな。必死に頑張って、お前との接点作ったのに……。柔道では一緒に組めるように裏工作したし、同じ美術部に入って、お前と同じ美大目指して……」
「ちょっ、ちょっと待って!」
百合人は、あわててさえぎった。福井がそんな努力をしていたのも驚きだったが、最後のフレーズは何だ。
「僕と同じ美大って何? 福井、お父さんと同じ道を進みたいんじゃなかったの?」
父親が美大の教授だから自分も、と目指していたのではなかったのか。ところが彼は、あっさりとかぶりを振った。
「いや? うちの親父は、俺に好きな道を行けって言ってるけど? それでも美大に進もうと思ったのは、花岡と同じとこに行きたかったから」
――何て誤解だ。
百合人は、顔を覆いたくなった。
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