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「へ……?」  百合人は、きょとんとした。僚介が、くすりと笑う。 「失礼なことを言って悪かった。クビになんかしないから、安心して。君がゲイなのかどうか、探りを入れたかったんだよね」 「……どうして、わかったんですか」  クビにされずに済んだことにはほっとしつつも、百合人は疑問を抱いた。会ったばかりだというのに……。すると僚介は、けろりと答えた。 「僕も、そうだから。同類の匂いがした、っていうかさ」 「僚介さんが!?」  まじまじと顔を見つめれば、僚介は微笑んだ。 「うん。そういうわけで、仲間だと思って何でも話してくれたらいいから。あ、カナや母には何も言わないから、安心してね。……ところで」  僚介は、百合人をチラリと見た。 「花岡先生……いや、百合人君でいいか。百合人君は、今彼氏いるの?」 「……いえ」  知らず、声が小さくなる。彼氏、と聞いて思い浮かぶのは、南原の顔だ。南原とはあれ以来卒業まで、口を利くことはなかった。今でも、苦い思い出である……。 「へえ、もったいないなあ。綺麗な顔してるのに」 「僕、恋はしないって決めてるんで」 「過去に失恋でもしたとか?」  言い当てられて、百合人はドキリとした。 「ええ、まあ……」 「そう」  僚介はうなずくと、意外な言葉を続けた。 「そういうのも、アリだと思うよ。無理に恋しなくてもいいと、僕は思う」

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