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”
百合人は僚介に連れられて、ピアノバーを訪れた。こんな店に来るのは、初体験だ。やや緊張していた百合人だったが、店内は意外にもカジュアルな雰囲気だった。
「僕は準備があるから、適当に何か頼んでて。ピアノも聴いてみてよ。最近入ったピアニストさん、すごい腕前なんだ」
そう言い残すと、僚介は慌ただしく控え室へ消えた。おずおずとカウンターに近づくと、女店員が愛想良く迎えてくれた。
「僚介君のお友達?」
「はい、まあ。あの、お酒はあまり飲めないんですけど……。すみません」
「どうして謝るの?」
女店員は、不思議そうな顔をした。
「だって、お酒を飲む場に来ているのに」
「そんなこと。ここは、お客さんに楽しんでもらう場だもの。気にしないで」
彼女は、百合人の好みをいくつか質問すると、度数の低いカクテルを作ってくれた。
「それにうちは、せっかくピアノも聴けるんだし。音楽で癒やされてちょうだい。あ、ほら、ちょうど演奏が始まる。どうぞ、近くで聴いてもらって? すごい人なのよ」
そういえば、僚介も同じことを言っていた。見ると、ピアノの周りにはすでに客たちの輪ができている。さあさあと女店員に促され、百合人も近くへ行ってみた。
ピアニストは、若い男性だった。髪は綺麗な金色で、座っていてもスタイルが良いのがわかる。演奏前にもかかわらず、女性客らはきゃあきゃあと盛り上がっていた。
――外国人みたいだな。素敵な人……。
ピアニストが、ふと顔を上げる。目が合ったその瞬間、百合人は絶叫していた。
「アポロンさん!?」
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