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”
「僚介さ……、どうして、ここに……」
「百合人君! 大丈夫?」
僚介は駆け寄ってくると、百合人の頭を撫でてくれた。
「過保護だとは、思ったんだけど。初回でホテルへ行くと聞いて、心配になってね。それでつい、来てしまった。それより、どうしたの? 乱暴な真似でもされた?」
百合人の青ざめた顔を見て、僚介は不安そうな顔をした。
「いいえ。でも……」
「おい、その子は俺の連れだ!」
その時、怒気をはらんだ声が響いた。ユウイチが、ホテルの外まで追いかけてきたのだ。僚介は、キッと彼を見すえた。
「止めてください。怖がっているでしょう」
「お前は何なんだ? ヒナタの男か?」
ユウイチは、眉をひそめた。
「よくも、猫をかぶりやがって……。だが、今夜の相手は俺だぞ。約束したんだから……」
ユウイチが血相を変え、百合人につかみかかろうとする。僚介は、そんな彼に向かって、静かに告げた。
「何か勘違いされているようですが、ヒナタは僕の弟ですよ?」
「……え?」
ユウイチの動きが止まる。僚介は、淡々と続けた。
「しかも弟は、高校生。あなた、何をしようとしていたんです? 場合によっては、警察……」
「クソッ」
僚介の嘘を信じたらしいユウイチは、舌打ちをして逃げて行った。彼の姿が見えなくなると、百合人はほっとため息をついた。
「僚介さん、ごめんなさい。彼、紳士に見えたんです。だからここまで来たんですけど、いざとなったら怖くなって……。ただの臆病者ですよね」
「そんなことないよ。少しでも嫌だと思ったら、断っていいんだ。それなのに強引に迫るのは、相手の方が悪いんだ……。でも、僕も悪かった。百合人君みたいに純情な子を、けしかけるような真似をして」
「いいえ!」
百合人は、ぶんぶんと首を振った。
「僚介さんは、悪くありません。こうして、助けに来てくれたじゃないですか。……僚介さん。僕、やっとわかりました。僕が好きなのは、僚介さんです。……お願いです、抱いてください」
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