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「いや?」  橘は、意外にもあっさりと否定した。 「花岡君がゲイだというのは、薄々気がついていたから」 「――本当ですか!? どうして」  百合人はぎょっとした。 「うちのゼミ生が男性といちゃついていた時、平然としてたじゃない。ノーマルな男性なら、そういう場合もっと驚いたり、嫌悪感をむき出しにしたりするよ?」  アポロンと浅野を目撃した時のことか、と百合人は思い出した。そんなリアクションでバレていたとは思わなかった。 「ま、でも、それとアプリの利用はまた別だけれどね。やはり危険性はあるから」 「……はあ。そうですよね」  説教されても仕方ない。百合人は、しょんぼりと肩を落とした。 「だから、さ」  橘は、百合人の隣に腰かけると、顔をのぞきこんできた。整った顔が間近に迫り、百合人はドキリとした。 「身近で相手を見つけるのはどう? たとえば、僕とかね」 「――ええ!?」  百合人は、目をむいた。まさか……。 「橘先生って……」 「僕はバイだよ」  橘は、けろりと答えた。 「綺麗なものなら、男女の別なく愛でたいという主義でね」  男女の別なく、という言葉に、百合人はふとアポロンのことを思い出した。無意識に、不機嫌な表情をしていたらしい。橘が不安そうな顔をする。 「それとも花岡君は、僕のようなタイプは嫌いかい?」  百合人は、返事に困った。橘は尊敬する先生だし、助けてくれたのは感謝している。だが、彼を好きかどうかは、まだ判断できなかった。 「ま、今すぐ答えろとは言わないよ。強引に迫ったら、セクハラになるしね。……ただ」  橘は不意に、百合人の下半身に目を走らせた。百合人は、思わず赤くなった。ユウイチの手で絶頂寸前まで高められたそこは、明らかな膨らみを見せている。 「そのままじゃ辛いだろう。楽にしてあげる」  言うなり橘は、百合人の前にひざまづいた。

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