58 / 73

 だが橘の指は、すぐに離れた。 「冗談だよ。そこまではしないから、安心して」  くすりと笑うと、橘は再び百合人のものを頬張った。ラストスパートとばかりに勢いよく吸い立て、舐め回す。あからさまな水音が、百合人の羞恥心を一層かき立てた。 「ああっ……――!」  先端を強く吸われた瞬間、百合人は達していた。はっと我に返れば、口の端を拭っている橘の姿が視界に映った。 「すっ……、すみません! 僕、出して……」  橘の口内に放ったことに気づき、百合人は真っ青になった。だが彼に、動じる気配はなかった。おまけに、こくりと嚥下するではないか。  ――いくら向こうが始めたこととはいえ、先生相手に……。  百合人は本格的にうろたえ始めたが、橘は平然としていた。 「花岡君が満足してくれたなら、それでいいよ。どう? 不快だった?」  いえ、と百合人は小さく首を振った。ユウイチに触れられた時とは違い、嫌悪感は少しもなかった。むしろ、快感でおかしくなりそうだった。躰は、余韻でまだ震えているくらいだ。  ――先生は、どうしてこんな……。そして僕は、彼のことをどう思ってるんだろう……。  もうすっかり普段どおりの橘を見つめながら、百合人は何度も自問自答したのだった。

ともだちにシェアしよう!