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”
その翌週、橘の講義を受けながら、百合人は物思いにふけっていた。
当然といえば当然だが、授業中の橘は、いつもと変わりない。穏やかで紳士的な口調で、神話の神々の系譜について語っている。そこからは、研究室で百合人に口淫を施し、射精まで導いた姿は想像もできなかった。
――それに比べて、僕は。
講義中にもかかわらず、百合人は顔が赤らむのを感じた。橘に教えられた快感が忘れられなかった百合人は、この一週間、毎晩自らの手で慰め続けたのだ。それは、これまで淡白だった百合人からすれば、考えられないことだった。しかも、それだけでは物足りなくなり、橘が触れた会陰や後孔にまで手を伸ばしてしまった。指を入れる勇気まではなかったので、撫でてみただけだが。
『この奥を使えば、もっと気持ち良くなれるよ』
橘の色っぽい声がよみがえる。アプリを通じてユウイチと出会った時、男同士のセックスのやり方については、一とおり調べた。だから、知識としては知っているが……。
――先生は、本気でそんな関係を望んでいるんだろうか……。
「では、今日はここまでにしましょう」
橘が、講義の終わりを告げる。我先にと教室を出て行く学生たちに交じって、百合人も退室しようとした。だが、教卓のそばを通りかかると、橘が呼び止めてきた。
「花岡君。この後研究室まで来てくれるかな」
橘は、低い声でささやいた。
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