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”
「んんっ……、ふっ……、ふぅ……」
橘は、執拗に一点を狙っては穿つ。橘の先端がそこを抉るたびに、すさまじい快感が襲い、百合人はソファの上で跳ねた。だが、すぐに橘の手で押さえつけられる。口を塞ぐハンカチのせいで、大声を上げることもままならない。出口のない快楽に、百合人は悶えた。瞳からは、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちて止まらない。
「ううっ……、んっ……、んんんっ……!」
橘の抽挿が、次第に激しくなる。もうダメだ、と百合人は思った。次の瞬間、視界が真っ白になる。
――……――!
あっけなく、百合人は達していた。ややあって、背中に熱い感触を覚える。橘は、百合人の背に放ったらしかった。
「大丈夫?」
背中を拭われ、優しく抱き起こされる。呆然と橘の胸にすがっていると、彼はこともなげに尋ねてきた。
「また会ってくれる?」
「え……と」
それは、付き合いたいという意味だろうか。百合人が目を泳がせていると、橘はけろりと続けた。
「すごく可愛かったから。実は、最初会った時からいいなって思ってたんだよね。だから、うちの学部じゃないってすぐわかった。こんな可愛い子がいたら、見逃すはずがないからね」
百合人は、思わず頬を赤らめた。それに、と橘がぼそりと続ける。
「初回から後ろでイケるなんて、素質ありそうだし」
「……え?」
「いや、何でも。ね、また会ってくれるだろう? 百合人君」
下の名前で呼ばれて、また体温が上昇する気がする。それでも百合人は、念のため尋ねた。
「ええ、でも……。橘先生には、付き合っている人はいないんですか」
脳裏にあったのは、僚介との苦い思い出だった。すると橘は、あっさり答えた。
「いないよ」
「――本当に!?」
信じられなかった。優しく、容姿も整い、大学の准教授でもる橘に、恋人がいないなんて。橘は、もう一度うなずいた。
「特定の相手はいないよ。だからさ、連絡先を教えてくれる?」
「……はい」
百合人は、いそいそと電話番号とメールアドレスをメモして、橘に手渡した。彼は満足そうにうなずくと、服を着るよううながした。
「さすがにそろそろ、帰って来る時間だしね」
チラチラ時計を気にしながら、橘が隣の部屋を指さす。確かに、他の教授らに怪しまれてはまずいだろう。百合人は、大急ぎで服を身に着け、部屋を出たのだった。
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