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 この場に及んで、壱人の言ってみれば恋愛の経験値に感謝してる自分に気付いた。普通の女の子なら彼氏の歴代の恋愛事情に嫉妬したりするんだろうけど、俺の場合は少し違う。 「あっ……、んんっ」  何しろちゃんとした恋愛をしたことがない俺には経験値というものがなく、セックスに関しても持っている知識は雑誌やネット、テレビなんかで収集するもののみに限られている。経験値も皆無だし、何もかもが初めてのなか、ここまできちんと準備してくれているのも嬉しかった。 「泉、ごめん。ちょっとだけ腰上げて」 「……やっ。ば、ばかっ。か、返せっ」 「どれ……、うん。やっぱ泉のはかわいいな」 「――っっ」  経験上、初めてがどんなものかを知っているだろうから全てを壱人に任せればいいって、そんな気持ちになる。正直、ここまできっちりと下準備されていたら萎えるというか引いてしまいそうだけど、俺は反対にこれで壱人のことを見直したし、全てを壱人に任せる覚悟もできた。  壱人がここまで下準備するのは相手のためだってことも分かるし、ここまで知っている壱人になら全てを任せても安心できる。なーんてちょっと乙女なことを考えていたら、壱人がおもむろにベッドサイドに手を伸ばした。 「……あ」 「最初はちょっと冷たいけど我慢しろな」  壱人はそう言うと、手にしたローションの容器をぶちゅっと押し潰した。その容器はハンバーガー屋とかホットドック屋なんかに置いてあるケチャップやマスタードが入った容器と同じタイプのもので、尖端から飛び出てきた少し粘着質の液体を手のひらに空けると、壱人はその状態で両手を擦り合わせた。  その手でさっきから悪戯していた俺のに手を添える程度に触れると、 「……あっ。や、やめっ!」  もうすっかり出来上がっているそれを、ぎゅっと強く握り込む。 「……あっ、んっ。この、ばか人っ。離せぇ、……っっ、んんっ!」  ぬるぬるでぐちゃぐちゃで熱い手が、俺のをきつく握っている。壱人が言うように確かに最初は少し冷たかったけど、壱人の手で温められた今は冷たさなんてまるで感じない。  なんというか、これってその……、っっ。  俺のをすっぽりと包み込んだ手で俺のを締め付けるように握り込めながら、壱人はその手を激しく動かした。それを握りしめたまま上下に擦り上げるそれは、擬似挿入を想像させるんだけど壱人の手は俺の拙い動きのそれとは別違っていた。 「んんっ……、んはっ」  経験はまだないけど、まるで本物に突っ込んでいるような感覚に思わず息を飲む。 「――ひっ!」  次の瞬間、後ろの穴に何かが触れ、ローションに滑ったそれが本来なら出口であるはずのそこから中に入って来た。

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