8 / 9
交尾が確認されました
宇宙からのVIPのために用意された高級ベッドが、智也の背を柔らかく受け止める。
「や、やっぱりダメだよ、涼。ここはアルバたちの……」
「俺はアルバたちの好意に甘えたいな」
智也の上で、涼は悪戯っぽく笑った。
「それに、ちょっともう無理そう」
涼は智也の手を取り、服の上から自分自身に触らせた。堅さと熱さが掌に伝わってきて、智也は真っ赤になった。
「ふぁ!?」
なのにこんな時でも、涼は智也を真っ直ぐに見つめてくる。
「智也……、智也」
名前を呼ばれながら身体を包まれると、全身の細胞ひとつひとつが、今、幸せですと声を上げているようだ。
(交尾って、すごいな……)
ただでさえ人づきあいの苦手な自分が恋をしたり、まして誰かと交尾をするなんて、智也は考えたこともなかった。
涼の唇がゆっくりと近づいてくる。智也も恐るおそる唇を開いた。
(甘い……)
柔らかい唇も、割り入ってくる涼の舌も、甘い。きっと涼が与えてくれるものは全て甘いのだ。しかし、
「……甘い」
唇を離した時にそう呟いたのは、智也ではなく涼だった。
「……智也、好きだ」
「ぼ、僕も! 涼が好き!」
返事をしなきゃ、と慌てて答えると、必要以上に大きな声が出てしまった。涼が小さく笑い、智也は頬を染めた。
「……可愛い」
涼は智也の襟元に手を伸ばした。もどかしい手つきでボタンを外してシャツを剥ぎ取り、Tシャツの裾から手を入れる。掌が腹を、脇を優しく撫でながら胸に這い上がっていった。
「んぁ……ッ!」
胸の突起を指の背で軽く撫でられただけで、智也は甘い声を上げてしまう。
「ひ、はぅ……」
「智也。もっと声聞かせて?」
「や、ぁ、」
Tシャツをたくし上げられて、敏感な乳首に涼の唇が触れた。
「ひぁああ……ぅ、ん」
「あふ、ふ、ぁ」
舐められると、信じられないくらい気持ちいい。
「あ……、りょ、ぅ」
「気持ちいい? 智也」
「ぅ……ん……」
「智也は素直で……好きだ」
「ふぁあ……!」
軽く噛まれると、快感が電流のように身体の中心を駆けぬけた。その刺激は智也自身に伝わり、熱く昂ぶらせる。
「ふぁ……っ」
涼は少し乱暴なくらいの勢いで、智也の残りの服を脱がせていった。意外と不慣れなその手つきを、智也は少し嬉しく思ってしまう。自分も服を脱ぎ捨てた涼の身体は、細身なのにしっかりと筋肉がついていた。ほどよく陽に焼け、均整の取れた逞しい身体つき。
(わあ……かっこいい……)
思わず見とれていると、既に興奮しきった自身の先端から、甘い蜜がとろりと溢れた。「――!!」
慌てて隠そうとすると、その手を涼に取られてしまった。
「ひゃ、や、め、だめ、らめ、」
「恥ずかしがることないよ、智也」
涼は智也の手を取ったまま、涼自身に触れさせた。それは智也のものと同じように、しっとりと濡れている。
「あ……」
涼が自分と触れ合うことで、興奮している。そう思うと、智也の蜜はさらに零れて止まらなくなった。涼はそんな智也自身を軽く握り、あの動きをし始める。
「あ、はぅ、ふッ」
「ん、ンッ、うぁ……」
「はっ……はぁ、あ、あぁ……ッ」
小刻みに息を吐きながら喘ぐ智也に、涼は、同じように自身を愛撫するよう促した。
「智也、も……」
「いい、の?」
「うん」
おずおずと指を伸ばして涼に触れると、抑えた吐息が首筋にかかる。ぎこちない手つきで軽く扱くと、涼の身体が震えた。
「あ……」
互いに相手に触れて、快感を与え合う。こんなにも優しい触れ合いがあるのだと、智也は始めて知った。
「ふぁ、ぁ……んッ」
「あ、あぅ、」
「あっ、あ、アッ」
涼の手の動きに合わせて身体が震える。
「ん、りょ……、はぅ……ッ!」
いきなり耳たぶを甘噛みされ、智也はあられもない声を上げてしまった。
「や、……んぁ、あッ、ぁあああ!」
「智也、耳、感じやすいのか」
ちゅうちゅうと音を立てて耳をねぶられる。
「ひぁ、あ、……め」
「だって智也が、ねだるような声出すから」
「だって、な、ぁあ、しゃべんらいれ……」
愛撫を続ける涼の掌が、くちゃくちゃと淫靡な水音を立てた。
「あ、ぁ……っ、や、涼……っ」
二人して互いに愛撫を続けるうちに、どちらからともなく、自分自身を相手に擦りつけ始める。
「うッ……ん、ふぁ、ア」
「は、はふ……ぅ」
聞こえる涼の、荒い息づかい。智也がそっと目を開くと、少し眉を寄せ、切なげな表情で快感に耽る涼の顔が目の前にあった。
「涼……」
零したものでぬるつく性器は温かく、ほんの少し擦られただけで死ぬほど気持ちいい。やがて涼は智也のものと自分のものをひとつに握って、一緒に擦り始めた。
「あ……ッ! や、あ、はぁッ、あうぅ」
「あふ、はぅ、あぅッ」
「んあ! あっ、あ、ぁ」
(うう。気持ちよすぎて死んじゃう……!)
涼は熱く火照った二つの先端を掌でくるみ、くちゃくちゃと揉み込みようになで回した。
「ん、ンンッ、あ、ぁあああ……」
「や、涼、だめ……っ、」
「なんでだめ? これ、気持ちいい……」
上ずった声音で囁かれると、恥ずかしさより快感を求める気持ちがあっさり勝ってしまう。智也は、自分にこんな淫乱な部分があるなんて知らなかった。
(結構エッチだとか思われたらどうしよう……)
しかし涼が智也の敏感な先端に自分の先端を擦りつけてくると、もうそんなことを考える余裕はなくなってしまった。
「ひぁ、あ――……」
身体の力は抜け、ただ快楽に身を任せる。
「これ、気持ちいい? 智也……」
「ん、う……ん」
ずっとこうしていたい。だが、雄の身体には限界がある。そのことを智也は少し悲しく思う。涼が身体を起こし、ベッドサイドテーブルに並ぶボトルの中から潤滑油を取った。アルバたちのために用意されているものだ。
「……ちょっと、借りる」
涼は照れたように笑った。
「あ……」
「あ、その、無理しなくてもいいと思うけど――、智也は嫌……かな?」
「そっそんなことない! 嫌じゃない!!」
「……じゃあ、しよう。智也」
「!!」
そんなに柔らかい声で、表情で、そんなことを言えてしまう涼がかっこよすぎて、智也はなんだか泣きたくなった。
「涼……。好き」
「智也」
涼は智也を安心させるように、首筋や肩に口づけながら足を開かせた。
「んンッ」
潤滑油でたっぷり濡らした指で秘部を撫でられると、智也は恥ずかしさに身を捩る。
「智也……だめ。じっとして……」
「う……っ」
卑猥な音を立てる涼の指にほだされるように、固く閉じた肉の蕾が少しずつ綻ぶ。
「ん……んっ」
「智也、力、抜いて……」
指先が少しだけ、智也の中に入った。
「ひぁっ!」
「ご、ごめん! 痛かった!?」
涼が慌てる。
(いつも落ち着いててかっこいい涼の、こんな表情を、僕だけが見てる……)
智也がそんなことを考えた瞬間、
「あ!」
涼が小さく声を上げた。
「今ちょっと、柔らかくなった」
「う……っ」
「辛い? 智也……」
「だい、じょ、ぶ」
涼が自分に苦痛を与えまいと、逸る心を必死で抑えてくれているのが分かった。その労りを感じるほどに、智也の心と身体は同時にほぐれてゆく。心と身体は繋がっているのだと、そんな当たり前のことを初めて実感する。
心と心を繋げるために身体と身体を繋げる。交尾は自然なことなのだ。
「涼。もう、大丈夫」
智也は声の震えを抑えて言った。自分から求めるようなことを言うのは、少し恥ずかしい。でも、早く涼を受け入れたかった。涼は智也の額にそっと口づけを落とした。
「辛かったら……、言って」
「うん」
欲望に猛る雄を押し当てて、涼がゆっくりと身体の中に入ってくる。智也は目を閉じた。
「はっ、はうぅ……」
(あ、熱い……っ)
肉を割って入ってくる、涼の塊。
「ウ……ッ」
受け入れがたい場所に涼を受け入れながら、智也は耳元で小さく呻く涼に呼吸を合わせた。
「ヒあぁっ!」
身体に楔を打ちこまれるような鋭い痛みで、つい声を上げる。涼は慌てて身体を離した。
「ご、ごめんっ!」
「ちょ、ちょと、いひゃいれふ」
「もっとゆっくりする。ごめん……」
「らいじょぶ……」
涙目になっている智也の呼吸が整うまで待ってから、涼はまた口づけをしてくれた。そして時間をかけてゆっくりと、智也の中に入ってくる。
「んッ、ん、ふ……っ」
「あ、はふ」
「……智也。ちょっとだけ我慢できる?」
「う、ん。だい、じょうぶ」
涼は大きく息をつき、智也にぐっと体重をかけた。身構えてしまって力が入らないよう、智也は身体を楽にして受け入れる。
「ひ、ぁあ――……!」
涼は、きちんと繋がっていることを確認するように、ぴたりと身体を密着させた。
「は、はいった……ね、智也」
「ん……っ」
智也は小さく頷いた。味わったことのない感覚。涼はこうして自分に、新しい変化を運んできてくれる。涼への想いはもう、好き、という言葉だけでは足りない気がした。
「あ、ふ……っ」
涼が智也の中を探るように、注意深く抽挿し始める。
「う……ッ、智也、はぁっ」
耳元で聞こえる涼の小さな呻きが、智也を欲望の高みへ引き上げた。
「ん、ッ、あ、ぁぁ……!」
「あ、あうぅ、は、ふ」
「――ぁんあッ!!」
突然、まるで泡が弾けるように、智也の下半身を快感が貫いた。激しい声を上げたことを恥じる余裕もない。
「ひっ、あぁぁああ!!」
「あぅ、んっあ!」
「……ココ?」
「あ、あぅ! りょ、らめ、そこ、」
だめだと言ったのに、涼は激しくそこを突き始める。
「ああぁぁッ! はう、あ、あぁ、んぁ!」
「い、っあ! ふぅ、アッ、あ」
快楽に翻弄されて智也が声を上げると、涼のくぐもった呻き声も次第に激しくなる。涼の細く繊細な指が、智也の髪をくしゃりと握り込んだ。その瞬間――。
「ひあ、ああぁぁッ――」
「あ、智也っ、俺もう、出る……」
智也が射精したのと同時に、どくどくと熱い奔流が、身体の隅々にまで流れ込んできた。どちらが先に達したか分からないくらい、智也は涼とひとつになっていた。
交尾に集中する二人の邪魔をしないよう、ガラスの向こうから見守っていたアルバは、隣に立つブランにそっと目配せをした。
「ブラン、見て!」
ブランは生真面目に頷き、小さく呟く。
「……交尾が確認されました」
ともだちにシェアしよう!