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第6話

 手を繋がれて寝室へと向かい、天蓋付きのベッドの上をふんだんに飾った赤い薔薇の花束と花びらを見て、敏也は笑った。 「僕、こんなオプションを頼んでましたっけ」  スタッフ達の過剰なもてなしに恥ずかしくなる。それでも敏也は嬉しそうにベッドの端に腰かけた。私もその隣へと座ると彼の体温が仄かに二人の間を伝って感じられた。 「千晶さん」  彼が私の髪を触り、頬に手のひらを添えて顔を近づける。私も彼の肩に手を置くと、また口づけに応じた。先程よりも深く情熱的に。私達は互いの歯列を舐め、舌を絡めて、混ざりあった唾液を啜った。 「ん……。ふっ、……んぅ」  少しの隙間から空気を確保する度に粗くなる呼吸の中で、満足には程遠いものの唇を離すと、その間をつぅ、と細い銀の糸が名残惜しそうに引き伸ばされて途切れた。  官能に上気した敏也の表情を初めて目にした。きっと私も同じような顔を彼に晒しているのだろう。口に出さなくとも互いを求める狂おしい程の想いが、その表情だけで理解できた。 「千晶さん……」  吐息混じりに呼びかけられて、敏也の肩に添えた手に力を込めた。そのまま上体に体重を乗せ、彼と共に横たわろうとした時だった。

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