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第9話
真剣な顔で答えを出した彼に、待って、と再度言葉を遮る。折角の申し出だが良く良く考えてみると私は彼の好意に甘えっぱなしだ。
十代の終わりから二十代初めまでの間に私は抱かれる立場を何度か経験している。初心者の彼に体の負担を強いるよりも私が抱かれるほうがいい。
それに……。
はだけたシャツの襟元から覗く敏也の体。
それは一週間前に無防備に私の前で眠っていた時でも、しっかりとした筋肉をまとっている事が一目瞭然だった。そして、あのとき劣情に浮かされて口に含んだ大きく熱い彼自身。
――アレは私にどのような快感を与えてくれるのだろう。
バスローブを乱したままでベッドを降りた私を彼の視線が頼り無げに追いかけてくる。それに安心させるように笑いかけた。
「少し待っていてください。もう一度シャワーを浴びてくるから。そして戻ってきたら……。今度こそ本当のふたりの夜の始りです」
敏也は何かを期待する笑顔で私を送り出してくれた。
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