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第6話 高瀬

出会った当初18だった真乃斗くんは、去年の12月でちょうどハタチになった。 つまり俺は 彼がジュウクからハタチになるそのちょうど境目の肌を、 その夜の一晩中、夢中になって撫でていたのだった。 ーージュウクもハタチも変わらないよーー はじめての、妖しくてイカガワシイ行為にふけったあとのあの独特な空気の中、 裸でベッドに横たわったまま、 どこを見てるでもない瞳で真乃斗くんが言っていたのを思い出す。 確かに、19と20の真乃斗くんの肌には、 これといって大きな変化は全くと言っていいほどなかったし、 俺にとっても年齢はたいして意味はない。 それでも、十代と二十代は違う、、、と思う。 そこには決定的に何か大きな「へだたり」を感じるのだ。 二十代と三十代にもそれがあるのかはまだ知らない。 俺はちょうど2カ月前の1月の終わりに、29になったばかりだった。 ーーー・・・ 俺と真乃斗くんの出会いや関係性を誰かに説明するのは、 少しだけ厄介だ。 まずは出会いは2年前の春。 真乃斗くんが先日卒業した、ITの専門学校に通い出したころに一度だけ、 暖かい春の光と風の中で出会った。 はじめて俺たちが挨拶を交わしたとき、 そこには俺と真乃斗くんともう一人、 俺の親友で、そうして真乃斗くんの「オニイチャン」が一緒だった。 真乃斗くんは俺の親友の弟なのだ。 あの頃もいまも、 俺は大学病院で心療内科という専門分野の勤務医をしている。 内科や外科と違って、心療内科の患者さんは全員が予約制だ。 だから勤務時間はよほどのことがない限り、定時に始まり定時に終わる。 医者のくせに残業とはまず無縁だ。 どちらかといえばヒトと会話をするのが好きな性分で、 いまの仕事は天職かどうかは甚だ疑わしいが、 それなりにやりがいを感じながら続けられている。 医学部で一緒だった、親友である真乃斗くんのオニイチャン ・・・名前を奥野哲至という・・・は、 同じ病院の内科医として働いている。 あちらは入院患者のほか、外来も受け付けているので ほとんどの場合、残業が日常だ。 そんな中であったため、哲至とはなかなか仕事以外、 外で会うことは然う然うできなくなっていく。 互いに忙しく、淡々と日常が過ぎている、2年前のその春。 滅多に自分から人を誘わない哲至からめずらしく連絡があって、 これまためずらしく、相談したいことがあると言ってきて、 それからわずか3日後には、俺ははじめて真乃斗くんに会ったのだった。

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