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第8話 高瀬

哲至は確か、 相談したいことがあると言っていたことを思い出しながら、 その兄弟 ・・・とは言われたのだが、いまだ二人の関係を理解は出来ていない・・・ のかもしだす妙な空気感に、なんとなく二人の顔色を伺う。 真乃斗くんからのランチのリクエストがなかったため、少し考えて 行きつけとまでは行かないが、 この時間でもあまり人がはいっていない、 けれど常連客がそれなりにいる、 こじんまりとした洋食屋に二人を誘うことする。 なんとなく賑やかすぎず、 かといってあまりに静かすぎるのも違うなと思ったからだった。 めずらしい哲至からの誘いではじまった妙な休日のランチは、 これまためずらしく、 いつもはあまり自分から話すことが少ない哲至が終始、話題を振って 俺と真乃斗くんがそれに答えるという形になっている。 その哲至の気の使い方・・・といったらいいのか・・・は、 どこか明らかに兄弟のソレとは違う気がするのは、 哲至は弟を「くん」付けで呼び、 真乃斗くんは哲至に敬語で話すからなのはすぐにわかった。 二人のよそよそしさは、明らかに家族の、兄弟のソレとは違う。 でも、それに気づいているからといって 俺からなにか、確認するようなことはせず、 話題は常に、当たり障りのないモノに気を配るようにした。 「あ、そろそろ時間だね」 ちょうど食べ終えてコーヒーを飲みだしたころ、 哲至が真乃斗くんにそう言うと、彼は黙ってうなずいて一人立ち上がった。 「どうした?」 立ち上がった理由を知りたくてそう言った。 すると 「真乃斗くんはこれから親父と買い物すんの」 聞いた相手は彼だったのだが、返事をしたのは哲至だった。 「買い物って?」 「新しいパソコンを買ってくれるって言うので」 「へぇ」 聞けばそれは、専門学校の入学祝なのだそうだ。 「遠慮しないで高くて良いヤツ買ってもらいなよ」 哲至は立ち上がる気配がない。 つまりこのまま、真乃斗くんだけを送り出すつもりだってことだ。 「あの、今日はごちそうさまでした」 「いえいえ」 お辞儀をする真乃斗くんの、サラリと髪が揺れるのを見つめる。 失礼しますと言って、俺に、、、そして哲至にも。 ぺこりとお辞儀をして一人、店を出て行った。 そうして、なんというか少しの「間」が訪れる。 哲至といて、こんな妙な空気感を感じるのはおそらくはじめてだ。 「お前は行かなくていーの?」 行かないことをわかっていてそう聞いた。 それはきっと、口を開く口実のためだ。 「俺はパソコンとかそういうの、わかんないもん」 コーヒーに口をつける哲至をじっと見つめる。 つまりは相談したいことってのは、、、 「弟か」 「ん、、、弟だって」

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