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第21話 高瀬

午後の3時を回ったころに家に戻ると、 ソファの上で真乃斗くんが寝ていた。 午後のヒカリがまぶしいリビングのソファの上に、 細い身体を丸めるようにして、小さな寝息を立てている。 生成り色した肌触りの柔らかい毛布にくるまれて、 真乃斗くんの見えているのは、目元から額と小さな頭だけだ。 目元しか出ていなせいで長い睫毛が妙に目立つ。 グレーのソファの上には、実際柔らかいその髪が 柔らかそうに散らばっていて、 その無防備な様子に思わずため息が出た。 真乃斗くんはよく眠る。 時間があれば寝ているような気がする。 そういう、俺とはずいぶん違う性質を持った真乃斗くんに惹かれることは、 あまりに必然のような気がする。 いつからここで寝ていたのかはわからないけれど、 自然と目が開くまではムリに起こそうとは思わない。 音を立てないようにして、今日4杯目になるコーヒーを淹れた。 ダイニングチェアに座って少し先にいる真乃斗くんを眺める。 会話をすることがなくても、存在がそこにあって、 それをただ感じられるだけで俺は十分幸せだ。 たとえ真乃斗くんが俺ではない、別の誰かを好きでいるのだとしても。 出会ってから2年は経っているといっても 「はじめまして」とあいさつをしてから次に会ったのは、 哲至に紹介されてから2か月ほどたってからだった。 二度目に会ったとき、 真乃斗くんが「二度目まして」と挨拶をしたのは、 その年の暑い夏がはじまる少し手前の季節だった。 その日も俺はコーヒーを飲んでいた。 ーーー・・・ 二度目に会った夏の初め、 真乃斗くんの通う専門学校の近くのカフェで会った彼は、 前回会ったときよりもどこか大人びて、さらに眩しく見えた。 実際に会うのには2カ月を要したけれども、 この2か月間、メッセージのやり取りは何度かしていたおかげで、 互いの緊張は最小限に抑えられていたような気がする。 初めて会ったあの日。 哲至に俺の連絡先を教えてもいいかを尋ねられて、 俺はそれを快諾していた。 するとその夜のうちに、真乃斗くんからメッセージが来た。 今日はありがとうございましたと、丁寧な言葉があって、 連絡先を哲至から聞いたことが書いてあった。 いつでも連絡してというメッセージと、 俺からもメッセージしていいかという質問をする。 なぜならきっと真乃斗くんは、 自分から俺にメッセージをしないだろうとわかっていたからだ。 それは俺が哲至の親友だということや年上だということや、 初めて会った人間ということなんかのいろいろが絡んでいる。 そういうモノが気にならなくなるまではきっと、 彼は自発的に連絡はしないだろうと思った。 もちろん大丈夫ですと返ってくれば、 じゃあ遠慮しないねと返事を返す。 そうして実際、できるだけ自分から連絡を心掛けた。

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