23 / 101

第23話 高瀬

「話しておこうかなって思うことがあるんだ」 、、、と。 ずいぶん明るく言ったつもりだったけれど、 真乃斗くんは少し警戒した顔をした。 「なに?」 「ん、、、哲至のこと、、、つまり、 恋人が男だってことはもう知ってるでしょ」 すると、真乃斗くんは視線を伏せてコクリと頷いた。 長い睫毛がパサリと揺れた。 メッセージのやり取りの中で、 哲至が男を好きになる男だってことや恋人と住んでいることを、 すでに真乃斗くんが把握してることは知っている。 「実は俺もなんだ」 これもなるべく、ライトに明るく言ったつもりだ。 「高瀬さんも男が好きってこと?」 「うん。男しか好きになれないの」 どちらかといえばまぁるい真乃斗くんの瞳がこちらをじっと見つめて 「そっか」と短く言った。 どんな反応をされ、どんなジャッジをされるのだろうと思って、 真乃斗くんを注意深く見つめても、 実際の彼のその声や表情にはあまりにも浮き沈みが無くて、 その真意は読めない。 けれども実際、 哲至の存在がクッションになっているだろう状態での俺の告白は、 そこまでショッキングな事ではないのかもしれなかった。 「哲至さんの恋人って会ったことある?」 そうして、 真乃斗くんから出てきた話題は俺ではなくて、哲至の恋人についてだった。 「ん。あるよ」 「どういうヒト?」 「ん~、、、小柄で勘が鋭いヒト。でもすごく良いヒトだよ」 このときの俺は、 まさか真乃斗くんが哲至のことを そう言う意味で好きだなんて知らなかったので、 彼が突然出会ったオニイチャンである哲至やその恋人に 興味があるのは普通のことだと思っていたし、 この時の真乃斗くんの表情を それが落胆なのか、単純な興味なのかもわからなかった。 ただ、俺だけが哲至を想う真乃斗くんを 眩しく、とても特別なヒトとして、見つめていたのだった。 ーーー・・・ 「おはよ」 「・・んはよ」 それから15分後には真乃斗くんが目覚めて、 毛布にくるまれたままでこちらに視線をやった。 「寝ちゃった」 「いいじゃん」 なぜだか真乃斗くんはいつも、 こうやって昼寝やら夕方寝やらをして起きるとそう言った。 「いつ帰ってきたの?」 と寝起きの可愛らしい声で言われて、 「ちょっと前だよ」 と答える。 「そっか」 ソファから起き上がってこちらに来る真乃斗くんは、 いまだぼぅっとしたような顔つきで毛布を引きずりながら、 その毛布ごと、目の前のダイニングチェアに座った。

ともだちにシェアしよう!