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第24話 高瀬

体育座りで毛布にくるまって椅子の上で丸まる、 真乃斗くんは可愛い。 「午後は予定あるって」 「哲至?」 「ん」 予定がなんなのかは聞かなかった。 哲至の予定なんて聞かなくたって分かるのだ。 哲至と会ってきた後にしては落ち込んでいる、 彼の理由がわかった瞬間だった。 「昼、なに食べた?」 だから話題を変えた。 それが正しいことのように感じる。 「パスタ」 「じゃあ夜はパスタ以外だね」 「ん・・・」 毛布に顔を寄せて斜めを向く真乃斗くんを見つめる。 サラリと髪が落ちて、表情はよく見えないのに妙にドキリとする。 なぜなら俺の頭の中で、 自分のあげたその毛布が自分自身になってしまっているからだ。 「食べたいものがあったら言って」 「ん」 真乃斗くんはこちらを見ずに短く答える。 潤んだ瞳でどこも見ていないって顔をして、 ・・・いや、たぶん哲至を見ているのだろう・・・ 愁いを帯びた真乃斗くんがかもし出すその空気感は、異常に綺麗に映る。 それはとても不謹慎だとわかっているけれど。 「バイトでも探そうかな」 突然そう言われてドキリとする。 「なにかしたいことある?」 「そんなものないよ」 真乃斗くんが働くことに反対なんてしてない。 でも、、、 「でもなんか・・こんなのはイケナイかなって思うから」 こんなのと称したことが俺と暮らすということだとしたら、 俺は少し悲しいと思った。 ーーー・・・ 向いていないと言い、後悔しかしてないと言いながらも、 くじ引きで選んだそのITの専門学校を2年間、 真乃斗くんはほとんど休まず通って、しっかり卒業もした。 とはいったものの、就職はしなかった。 どうがんばってもパソコンが向いていないらしい。 家を出たがってた真乃斗くんに一緒に暮らそうと言ったのは俺だ。 去年の彼の誕生日に。 その日の俺は 絶対に言わないでおこうと思っていた真乃斗くんへの、 その自分の気持ちを打ち明けてしまって、 おまけにその日のうちにその身体に触れてしまった。 さらにおまけに、 時間の許す限り、自分のそばにいて欲しいのだと プロポーズもどきまでのすべてを済ませてしまったのだ。 いま振り返っても、あの日のあの熱意や情熱が、 いったい自分のどこからどうやって沸いて出てきたのかが まったくと言っていいほどわからない。 真乃斗くんに出会う前の過去の自分を振り返ると、 ほとんどの場合俺は受け身で、 相手から言ってくるのを待つような節があった。 しばらく恋愛からは遠ざかっていた俺が 彼に対してだけはどうにも、 気持ちを抑えることが出来なかったのだった。

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