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第34話 真乃斗

チキンを3つ食べてビールを2缶空けた。 十分お腹が膨れて、冷蔵庫から3缶目のビールを取り出すと、 そこからダラダラとしばらくテレビを流し観する。 CMになったところで とくに考えもなく携帯を引き寄せると、画面をタップした。 独りの時って意味もなく携帯を開いてしまう。 向こうにいたせいもあって、 一応Facebookやインスタのアカウントはずいぶん前から持っているけど、 写真や文章なんかを上げていたのは本当に最初だけだった。 いまは友達や知り合いが写真を上げていても、 そこにリアクションすることもしない。 通知をOFFにしてるから自発的に開かない限り気づかないし、 ぶっちゃけアカウントを持ってるってだけだ。 おまけに哲至さんも高瀬さんも、そういった類のSNSはやっていないから、 余計に必要はなくなってしまって自然と縁遠くなった。 そんなオレが携帯を開くときはほとんどの場合、 哲至さんとのやりとりした過去のメッセージの画面を開く。 もしくは写真フォルダーを開く。 哲至さんが映っている写真たちを。 今日は哲至さんとのやりとりの履歴の残る、メッセージを開いた。 さほど多くはない、メッセージのやりとりをなんとなく眺める。 もう何度も見返して、 ところどころ暗記してしまっているその文章たちを、 ときどき画面をストップさせながら見つめた。 哲至さんのメッセージはいつも短い。 そして、可愛いスタンプがついている。 それは高瀬さんとは真逆だ。 高瀬さんは文章が長いことが多くて、スタンプは滅多に来ない。 日本にきた最初のころはよく、哲至さんからメッセージが来てた。 そうして、いまではもうほとんど来ない。 もともと忙しいから仕方がないけど、 メッセージが来るととても嬉しくなるのはいまだ、哲至さんからのメッセージだ。 オレは前から滅多に自分から哲至さんにメッセージはしない。 だって哲至さんは大切な・・・大好きな恋人と、時間を過ごしているから。 大好きなヒトの大切な時間をじゃましたくはない。 ・・・なんてキレイゴト、思ったりはしていない。 ただ、寂しくなるからしないだけだ。 それは自分が寂しくなる。 いま、哲至さんのそばに居られない自分が寂しくなる。 いまだけじゃなく、どんな時も哲至さんのそばにいるのはあの、 たった二度ほどしか会ったことのない 色白で小柄な、血のつながりのない男なのだった。

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