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第35話 真乃斗
この気持ちがカタチになることはなくても、
自分が哲至さんとは血が繋がっている、とても特別なカンケイであることだけで、
ちょっとだけ満足はしてる。
ホントにちょっとだけ・・・だけど。
するとそこに、高瀬さんからメッセージが来た。
ーー夕飯食べた?もう少し遅くなるーー
珍しい短文は、きっと飲んでる「合間」を見計らって、
わざわざ時間を作って打ってくれてんだろうってわかって、
オレは思わず笑みが浮かぶ。
それはきっと、この孤独とか寂しさみたいなものから、
このメッセージだけで救われたからだ。
ーー食べた。もう少ししたらお風呂はいるーー
ーーわかった。出来るだけ早く帰るよーー
オレはスタンプを返すと、それがすぐに既読になって
高瀬さんがスタンプを返してくれるところまでを見届けると、画面を閉じた。
目の前のテレビの画面が突然、目に入って音が大きく聞こえる。
ビールを一口飲めば、
それはさっきより美味しく感じるのだから、
オレはなんて現金だろう。
軽い足取りでお風呂を沸かすために立ち上がった。
高瀬さんからもらった薄い水色のタオルケットを引っぱってくると
・・・これも、バイトが決まったときくらいに
高瀬さんがオレに買ってくれたものだ・・・
無造作にソファの上に敷く。
冷蔵庫から持って来ていた、今日4本目になるビールを開けると、
タオルケットの上でぐびぐびっと飲んだ。
お風呂上りは全身アツくて、いまはハーパンしか着ていない。
アツくて上掛けを上掛けとして使用する気にはなれないのに、
それがあるとどこか落ち着くって理由で
なんとなくそのタオルケットを引っ張ってきたのだった。
目の前のテーブルには箱に入ったままのチキンが、
その独特な油のにおいを部屋中に放ったままで、
冷蔵庫にしまわなきゃなと思いながらも、
なんだか動く気になれない。
腕だけを伸ばしてテーブルの上の携帯を引き寄せると、
ソファによでかかってとてもだらしない格好で画面をタップする。
画面の時計表示が勝手に目に飛び込んできて、
さらには高瀬さんからメッセージが来ていないことを確認すると、
オレは小さくため息をつく。
高瀬さんはいったい何時に帰ってくるだろう。
こんな時間にこの部屋でいることは、
たとえ高瀬さんがくれたタオルケットに包まれていたとしても、
自分はひとりぼっちなのだとひどく感じてしまうのだった。
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