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第46話 高瀬
ーーん・・ぅん・・・そうだね・・わかってるーー
暑い夏の土曜の午前中。
今日もソファの上にどこか小さく丸まった格好で、
真乃斗くんはオトウサンからの電話に出ている。
相変わらずいまだに毎週土曜日の午前中には、真乃斗くんの電話は震えて、
そうして、真乃斗くんはいまだにどこかかしこまった風にして、
その電話に出るのだった。
キッチンで濃いめのコーヒーを淹れながら、
とぎれとぎれに真乃斗くんの言葉が聞こえる。
ヒトの電話を聞く趣味はないので、
目の前のグラスに集中しようと意識を向けた。
グラスの半分まで熱いコーヒーを注いで黒糖をよく混ぜると、
そこへ水を少しだけ足す。
温めておいた豆乳の入ったグラスに
少しぬるくなったコーヒーを注いでまた、よく混ぜた。
そこへ氷を二つ放り込むと、
ピキピキと音を立てながら氷が消えていく。
やっぱりよく混ぜて氷がなくなってからもう二つ、
新たに氷を放り込めば、冷たいソイラテが出来上がった。
ちょうど電話が終わったようだったので、真乃斗くんも飲むかと尋ねれば
タピオカが飲みたいと返された。
「タピオカ飲んだことないな」
「うそでしょ。高瀬さん、ホントに日本に住んでる?」
ダイニングの椅子に腰かけながら苦笑する。
「一応ね」
ソファに座る真乃斗くんにそう言って、冷たいソイラテを飲んだ。
基本は熱いコーヒーを飲むことが多いが、
ときおり夏は甘くて冷たい飲み物が飲みたくなる。
「ねぇタピオカ」
少し怒鳴るようにして、真乃斗くんが言った。
「はいはい」
あまり相手にせずにそう言って、もう一口冷たいソイラテを飲む。
料理は出来ないが、ソイラテだけはときおり作る。
自分でつくるとコーヒーや甘さの濃さを自分好みにできるところが好きだ。
「だから『はい』は一回だってばっ」
ご機嫌斜めな真乃斗くんを見つめた。
オトウサンと話したあとの真乃斗くんは、だいたいほとんど不機嫌になる。
「じゃあランチは外に出よう。そうしてタピオカを飲もう」
「高瀬さんも飲みたい?」
「そうだね。どんなものなのか飲んでみたい」
「ホントに?オレに付き合って無理してんでしょ?」
そうしてその不機嫌は、ここ最近ではなかなかすぐにはなおってくれない。
「そんなことないよ。ホントに飲んでみたい」
「だったらすぐに行こうよ」
「いまコレを飲んでる」
「だからソレを飲むのを止めて行こうって言ってんの」
というより、
真乃斗くんはここのところ少しだけ、機嫌にむらがある。
オトウサンからの電話があってもなくても・・だ。
ソファの上で、
すぐに行かないならもういいよっと口を尖らす真乃斗くんを見つめた。
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