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第61話 高瀬

4人はそろって酒が強かった。 それでもその日は全員、明らかに酒の廻りがはやかった。 妙に明るいテンションの、 すでに出来上がった状態に近い二人を追いかけるようにして 俺も哲至も酒を飲んでいたし、 俺はなぜか楽しそうにはしゃぐ真乃斗くんがとても可愛くて、 やっぱり自然とピッチが上がった。 めったにつぶれない哲至が一番さきにソファで横になってしまって、 その姿を見た哲至の恋人がまるで当然のように 俺にはちゃんと布団を敷いてくれと言うから、 俺たちは予定外にも二人を泊めることになったのだった。 起きそうもない哲至をチラリと見つつ、 それでも一応、二人分の布団を用意する。 すると、シャワーを浴びて出てきた哲至の恋人は、 布団は一つでいいのにと言いながらも 「どうすんの?俺と布団で寝るの?それとも独りでここで寝るの?」 口を開けて寝ている哲至の顔を、 ずいぶん容赦なくぺちぺちっと叩きながら言った。 どこか大人げないその行為の全ては、 まったく優しくないように映るけれども、 その実は、まるで自分が独りで寝たくないのだと 恋人に駄々をこねる可愛らしい姿のようにも映った。 俺の視線は勝手に真乃斗くんを捕える。 それはきっと、どこか心配をして。 こんな風景を・・・二人の・・・哲至の姿を見てしまって、 彼は大丈夫だろうかと勝手に視線が動いてしまうのだ。 けれども俺の目に映る、二人を見つめる真乃斗くんは、 いままでのどの真乃斗くんの表情とも違って見えて、 とたん、心がキュウっとする。 結局、引きずるようにして哲至を布団へ寝かせてやると、 真乃斗くんは自分の・・・俺の買ってあげた・・・タオルケットを、 哲至の恋人に使うよう手渡した。 「高瀬さん」 電気を消した寝室で、真乃斗くんは俺の方を向くと、 なんともいえない穏やかな顔で俺を見た。 「どうした?」 「ん・・なんか楽しかった」 「そうだね。楽しそうだった」 自然と腕が真乃斗くんの背中に伸びてその身体を包み込むと、 ほっぺにキスをした。 「高瀬さんの話しをたくさん聞いたよ」 暗闇でも、真乃斗くんの瞳はキラキラと輝いている。 「なんだか良い話しじゃななさそうだな」 「景ちゃんは遊び人だって」 んふふっと愉しそうに真乃斗くんが言って、俺は思わず天を仰いだ。 やれやれと思いながらも否定は出来ない。 実際、来るもの拒まずな時代があったのだ。 「ヘンなコトを吹き込まれたわけね」 「違うよ。景ちゃんの話しをしてたんだよ」 いつものように見えてしっかり酔ってる真乃斗くんは おそらく初めて、俺を名前で呼んだ。

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