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第62話 高瀬

俺だって十分酔っぱらっているというのに、 なんとも自然とそんな風に呼ばれて全身がドクンとした。 手のひらが勝手に動いて、 真乃斗くんの前髪を撫でると後ろへ流すを繰り返す。 愛しいと思うたび、髪を撫でたくなるのはなぜだろうか。 そして髪を撫でるたび、愛しさは増していく。 「あ、でもね、 『正確には景ちゃんは遊び人だったになるかな』だって。 だって景ちゃんはオレが大好きだからって」 なぜか嬉しそうに、どこか誇らしげに言われてまた、 全身がキュウっとする。 「オレを好きになっちゃったから、 景ちゃんの遊び人はもう過去なんだって」 ああどうして・・・ 壁一枚隔てた向こう側に、今日は他人が二人もいるのだろう。 初めてこんなことを言われて、 あまりに可愛くていますぐ襲ってしまいたいのに、 頭の隅っこに小さく残った欠片ほどの理性が、それをストップさせている。 「まいったね」 「まいったの?」 可愛く繰り返されて思わずふっと笑った。 本当はもうずっと参っているのだと、自分だけが再認識する。 「ホントにすごく・・楽しかった」 「俺も楽しかったよ」 言いたいだけ言って、最後は呟くようにそう言うと、 真乃斗くんの瞼が重そうに閉じて、あっという間に寝息が聞こえる。 「はぁ、、、マジか」 いつものように・・・いや、いつもよりどこかひどく・・・ ぞんざいにココに独り置いて行かれて、 俺はまた天を仰いで思わず大きく息を吐いた。 寝てくれてよかったのだと思う反面、 ・・・だってどうせ、今夜はその肌に触れることは出来ないのだ・・・ ひどく寂しくもなる。 眠ってしまった真乃斗くんの身体を強く抱きしめて、 もう一度、そのほっぺに唇をくっつけた。 するとそのまま、 俺もあっという間に眠りに落ちていった・・・ ーーー・・・ 「んぁっ・・・はっ・・・」 しなる腰がいつもよりイヤらしく映って、 思わずその腰回りに唇をくっつける。 真乃斗くんのすばらしさはいろいろあるけれど、 少しの刺激にイチイチ恥ずかしいくらいに身体を震わせることは、 その中でも一二を争う、真乃斗君の魅力だ。 土曜の昼前からこんなことをしてるって事実だけでも十分、気持ちは昂るし、 なにより昨晩からもうずっと、独り勝手にお預けを食らっていた俺は、 ようやくこの綺麗な肌に触れることが出来たのだから、 勝手に動く自分の動きに、歯止めがききそうにはなかった。 おまけに、昨日の酒が抜けきっていない脳みそは 明らかに余裕がない。 いつもよりどこか乱暴にその華奢な身体を組み伏せて、 とろみのついた液体を塗ったくった指先を躊躇せずに挿し入れていく。

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